第755話 これからの行動
「確かにあの二人ならばいずれはそんな行動を起こす可能性もあるでござるが……恐らくは違うでござる」
「だろうね、大方姉上に危機が迫り、それを救うためにシノビ君が救い出すために連れ去ったんだろう」
「それが本当なら……リノ王女も危ないのかな?」
「その可能性が高い。恐らく、姉上を狙っているのは……」
ここでアルトはクノに視線を向け、彼女の調査報告を待つ。クノは王都内の警備兵達の会話を盗み聞きし、彼等が誰の指示を受けていたのかを話す。
「警備兵、いや王都内の騎士や兵士に指示を与えているのは宰相のようでござる。それと同時にアッシュ公爵も行方不明、フレア公爵家も……」
「お父さんが!?」
「……やはり、宰相が黒幕だったのか」
リーナは父親が行方不明だと知って衝撃を受け、その一方でアルトは歯を食いしばる。予想していたとはいえ、まさか忠臣だと思われていた宰相が今回の事件の黒幕だと判明し、悔しく思う。
王都内の兵士や騎士が宰相の指示を受けて行動しているという事は、宰相の方も正体を隠すつもりはないらしく、城門を封鎖したのも宰相の仕業だと確定した。
「今回の事件の発端は白面の仕業でござるが、白面の討伐のために出向いた王国騎士団の団長や団員は行方不明か重傷を負い、動けない状態でござる。事態の対処のために動き出した冒険者も何故か黄金冒級険者のゴウカによって何人かがやられた……これらが全て拙者が集めてきた情報でござる」
「こんな短い間によくそこまで調べられたね……」
「拙者も色々と伝手はあるのでござるよ。それと、プルリンも手伝ってくれたでござる」
「プルリンが?」
「ぷるぷるっ♪」
クノによると同行していたプルリンも役だったらしく、彼のお陰で城内に侵入する事が出来たという。
「城壁を乗り越える際、プルリンが兵士の注意を引いてくれたお陰で拙者は簡単に忍び込めたでござる」
「ぷるるんっ!!」
「そ、そうだったんだ……偉いね、プルリン」
「すご〜い、プルリンちゃん!!」
「中々出来るスライムだった」
可愛いだけではなく、囮役としても優秀でプルリンは兵士達を引き付け、その間にクノは王都内に侵入を果たしたという。その後、ちゃんとプルリンを回収して連れ戻してきた辺り、彼女が調査を終えるまでプルリンは兵士達から逃げ切ったらしい。
思いもよらぬプルリンの協力も会ってクノの調査は順調に進み、ナイ達はとりあえずは王都内の様子を確認出来た。しかし、状況を確認したところでナイ達はどうすればいいのか分からず、困り果てる。
「さて……ここからが問題だ。どうやら今回の黒幕は宰相である事は判明したが、僕達がこれからどうするかが問題だよ」
「問題?」
「当然だが僕としては姉上を見捨てるつもりはない。だけど、姉上を救うにしても今回は相手が悪い……現在の王都の兵士や騎士は宰相が管理する立場にある。きっと、父上も兄上も動けない様に何らかの手を講じているだろう。そして宰相に対抗できる存在はもう既に対処済みだ」
「テンさん達の事だね?」
「ああ、聖女騎士団は白猫亭で包囲され、他の騎士団を率いる副団長達も闘技場で姿を消している。貴族の中では武闘派のアッシュ公爵も捕まっているとすれば……現在、王都内で僕達に味方になってくれる勢力はいない」
「そんな……」
王都内の王国騎士団や味方になりそうな冒険者は既に捕縛されたか、動けない状態へと追い込まれている。そのため、今動けるのはここにいるナイ達だけであり、当然だが正面から乗り込んだとしても勝ち目はない。
黒幕は宰相だと判明したが、宰相を捕まえるにしても色々な障害が存在し、王都内に存在する兵士や騎士は彼の味方となり、他にも聖女騎士団を破ったゴウカが敵に回っていたとしたら最悪の事態である。いくらナイ達が力を合わせてもどうにかなる状況ではなく、作戦を立てなければならない。
「せめて包囲されている聖女騎士団を解放する事が出来れば色々と打つ手はあるんだが……恐らく、警備兵に抑え込まれている時点で聖女騎士団の団員達も深手を負っているんだろう」
「そ、それなら私が皆を治しに行くよ!!最近はナイ君に教えてもらった回復魔法も出来る様になったよ!?」
「いや、いくらモモでも全員を治療するなんて無理だよ……でも、回復薬とか持っていけないのかな?」
「回復薬?今、回復薬と言ったか?」
「イーシャン、お主のあれがやくだつのではないか?」
ナイの言葉を聞いてここで反応したのがドルトンとイーシャンであり、二人は何か思い出したのか急いで馬車へ向かう。そんな二人にナイ達は不思議に思うと、イーシャンは大量の丸薬が入った瓶を持ち出す。
「それならこいつを持っていけ!!俺が作った仙薬だ!!」
「せ、仙薬?」
「これはな、飲んだり噛んだりするだけで回復薬を使用した時と同じ効果を発揮するんだ!!しかもこいつの方が回復速度が速い、遠慮せずに持って行ってくれ!!」
「仙薬!?それは拙者達の国の薬ではござらぬか!?」
イーシャンが仙薬を持ち出してきた事にクノは驚き、彼女は仙薬を確認すると、それは間違いなく彼女の里に伝わる薬と同じ製法で作り出された丸薬だと見抜いて非常に驚いた。
※昨日の雨で出かけられなかった分、書き溜めていた分を投稿します。
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