第728話 聖女騎士団VSゴウカ
「これはいったい、何の真似ですか!?」
『何の真似と言われてもな、俺はそいつらに襲い掛かり、勝利した。それだけの話だ』
「襲い掛かった!?どうしてそんな真似を……」
『理由?そんな事、決まっているだろう……お前達に喧嘩を売るためだ!!』
「ふざけた事をっ……!!」
ゴウカの言い分を聞いてテン達は殺気立ち、特にエルマの怒りは尋常ではない。ガロとゴンザレスは彼女が小さい頃からマホと共に世話をしており、二人の事は家族のように大切に想っていた。
ガロとゴンザレスの仇を討つためにエルマは弓に矢を番え、ゴウカに構える。しかし、全身を甲冑で覆われているゴウカを仕留めるには彼の目を狙うしかなく、兜の隙間を狙い撃つ場合はゴウカを殺す事を意味する。流石に相手が白面ならばともかく、冒険者を相手に擦る事に躊躇してしまう。
「エルマ、落ち着きな……あんた、ゴウカだったね。これは何の真似だい?」
『だから言ったではないか、俺はお前達に喧嘩を売るためにきたとな』
「喧嘩だって……どうしてあんたがあたしらに喧嘩を売るんだい?こっちは恨まれる覚えはないよ」
『うむ、当然だな。別に俺もお前達の事を憎んでいるわけでも嫌っているわけでもない。だが、こんな機会でもなければ俺はお前達とこうして戦う事は出来ないからだ』
「戦う……?」
ゴウカの言い分にテンは訝し気な表情を浮かべると、ゴウカは背中のドラゴンスレイヤーを引き抜き、構えを取る。その気迫だけで他の者は圧倒され、テンでさえも冷や汗が止まらない。
『無論、決まっているだろう……俺の目的は強者との戦闘!!戦って死ぬ事こそが武人の誉れ!!行くぞ、全力で来なければ死ぬと思えっ!!』
「ちぃっ!?あんた、ただの戦闘狂かい!!」
「テン!!こいつは危険です……仕留めますよ!!」
テンとエルマはゴウカの気迫を浴びて彼が本気で自分達と戦うつもりだと判断し、この時にエルマは容赦なく矢を撃ち込む。その結果、矢はゴウカの顔面に向けて放たれ、まっすぐに兜の隙間から片目を貫こうとした。
しかし、放たれた矢に対してゴウカは手を伸ばすとあろう事かエルマの放った矢を掴み取る。まるで小さな虫を振り払うかのような態度でゴウカはエルマの矢を掴み取り、それを見たエルマは驚愕の表情を浮かべた。
「なっ!?」
『ほう、付与魔法の使い手だったか。こんな物を受けたら確かに俺も無事では済まないかもしれんな』
「ば、馬鹿なっ……有り得ないっ!!」
エルマの放つ矢は普通の人間が放つ矢とは比べ物にならない移動速度を誇り、これまでに彼女の矢を掴み取った存在など一人もいない。それなのにゴウカは何事もなく矢を掴み、しかも先端に宿った魔力を見て彼女が付与魔法の使い手だと見抜く。
矢を掴み取ったゴウカは地面に向けて放り込むと、矢は地面に突き刺さった時点で風圧が発生し、土砂を吹き飛ばして土煙を生み出す。それを確認したテンは退魔刀を構え、今度は自分が迎え撃つ。
「くそっ……下がってなエルマ!!」
「テン!?」
『ほう、お主が噂に名高い聖女騎士団の元副団長「剣鬼テン」か!!面白い、お主とは一度戦ってみたかった!!』
「ほざけ、ガキがっ!!」
ゴウカは全身が甲冑で覆い隠されているので実際の年齢は分からないが、テンは彼に向けて突っ込み、退魔刀を振りかざす。この時に白猫亭の屋根の上から飛び降りる影が存在し、戦斧を振りかざした状態でルナも攻撃を行う。
「うらぁっ!!」
「だああっ!!」
『ぬうっ!?』
上空のルナの奇襲と正面から来たテンの攻撃に対し、ゴウカは両腕を構えて二人の攻撃を受けた。頑丈な甲冑に覆い込まれていたとしても、聖女騎士団の中でも一、二を誇る怪力の剣士二人に攻撃を受けたら普通ならば無事では済まない。
しかし、攻撃を仕掛けたテンとルナは身体に電流が走ったように痺れてしまい、攻撃を仕掛けた方が衝撃を受けてしまう。いったいどんな素材を使用されているのかルナの戦斧とテンの退魔刀を受けてもゴウカの鎧には掠り傷程度の損傷しか与えられなかった。
(な、何だい、こいつは!?)
(硬いっ……!?)
まるで金属の塊に攻撃を仕掛けような気分に陥り、テンとルナは後方へと下がる。その一方で両腕で二人の攻撃を受けたゴウカは黙り込み、やがてため息を吐き出す。
『期待していたが……この程度か、やはり俺を満足させる相手ではないようだな』
「な、何だと!?」
「ふ、ふざけるな!!今のは本気じゃない、もっと私は強くなれるんだぞ!!」
『ほう、それは面白いな。では、本気を出してくれるか?』
ゴウカの言葉にルナは言い返すと、ゴウカはその言葉を聞いて期待する様にルナと向かい合う。その態度にルナは増々怒りを募らせ、テンに問い質す。
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