第727話 姫の居場所
――時は少し遡り、白猫亭にてヒナはマホの看病を行い、エリナが宿の外で白面の襲撃を警戒をしていた所、彼女が慌てた様子で宿の中に戻って来た。
「ヒナさん、大変っす!!ひ、姫様が来ました!!」
「えっ!?」
「……邪魔をするぞ」
「ううっ……」
宿に訪れたのは身体が濡れた状態のシノビとリノであり、気絶したリノをシノビが背負った状態で現れた。ここまでの道中に何度か白面に襲われ、傷だらけになりながらもシノビはリノを白猫亭まで運び込む。
どうしてシノビがこの場所を選んだのかというと、ここはテンが管理する宿屋であり、他に行く当てがなかったのでこの場所にリノを避難させるしかなかった。まだ気を失ったままのリノをヒナに任せ、シノビは外へ向かう。
「姫の事を頼む……」
「え、あ、あのっ……」
「必ず後で迎えに行く、それまでは守ってくれ」
「あ、ちょっと!?」
シノビはそれだけを告げると風魔を片手に走り出し、残されたヒナとエリナは困り果てながらもとりあえずはリノの服を脱がせ、濡れた身体を拭いた後にベッドに横にさせる。
最初の内はヒナはリノとマホの看病を行っていたが、姫がここにいると勘付いたのか白面の集団が襲撃を仕掛け、それの対応のためにヒナは家中の出入口になる扉や窓を全て封鎖して立て籠もる。エリナは屋根の上にて敵を迎撃し、そして遂にテン達が辿り着いた――
「――うりゃりゃりゃっ!!」
「このっ、しつこいっす!!」
『ぎゃああっ!?』
屋根の上にてエリナは次々と別の建物に立つ白面の急所を矢で貫き、戦闘不能に追い込む。彼女はエルマのような魔弓術の類は扱えないが、敵の動きを先読みして矢を放ち、的確に命中させる。
ルナの方は剛力を発動して戦斧を振り回し、次々と敵を吹き飛ばす。その一方で地上の方では鬼のような強さでテンが白面の集団を蹴散らしていた。
「ふんっ!!」
「がはぁっ!?」
「ぐあっ!?」
「うぎゃっ!?」
退魔刀を振り払うだけでテンは一度の攻撃で最低でも三人は吹き飛ばし、次々と集まる白面の暗殺者を吹き飛ばす。彼女は白猫亭を守るために全力を尽くし、更にここでテンを取り囲んでいた白面の元に無数の矢が降り注ぐ。
「テン!!遅くなりました!!」
「エルマ、やっと来たのかい!!行くよ、相棒!!」
「団長を助けろ!!」
「行くぞぉおおっ!!」
遂に白馬に跨ったエルマが駆けつけると、彼女の後方にも聖女騎士団の騎士達が続き、一気に形成は逆転した。白面の暗殺者を相手に歴戦の猛者が襲い掛かり、一気に殲滅する。
「うらぁっ!!」
「がはぁっ!?」
「せいっ!!」
「「「ぎゃうっ!?」」」
テンは退魔刀で敵を吹き飛ばし、エルマは彼女を狙う他の白面を弓で連射して急所を撃ち抜く。他の者達もテンに負けずに白面の暗殺者を叩きのめし、遂に白猫亭の周囲に集まっていた白面を一掃させた。
致命傷を避けた白面はその場を逃げ出し、無事に白猫亭を守れた事にテンは安堵するが、安心している場合ではない。すぐに彼女は宿の中に呼びかけ、中に居るはずのヒナ達の安否を確認する。
「ヒナ!!無事かい!?クロネは!?」
「だ、大丈夫!!クロネさんも平気です!!それにマホ魔導士とお姫様が……」
「良かった……」
マホも無事である事を知ったエルマは安堵するが、ここでゴンザレスとガロの名前が出てこない事に気付く。ランファンが負傷したゴンザレスとガロを連れて白猫亭に一旦戻るように指示していたのだが、3人がこの場所に居ないのかと戸惑う。
「ゴンザレスとガロは!?一緒ではないのですか!?」
「えっ!?いや、知りませんけど……」
「そんなっ……ランファンは何処に!?」
ランファン達が戻っていない事を知ったエルマは焦りを抱くが、このときに足音が鳴り響く。何の音かと全員が振り返ると、そこにはゴンザレスとランファンを両腕で抱え、ガロを縄で腰に括り付けたゴウカが姿を現す。
『ふはははっ!!やっと見つけたぞ、ここに集まっていたか!!』
「あ、あれは……確か黄金級冒険者の?」
「……ゴウカ!?どうしてここに!?」
黄金級冒険者であるゴウカが気絶したゴンザレスとランファンを抱え、ガロを縛り付けている光景を見てテン達は戸惑う。
3人とも死んではおらず、それでも重傷を負っていた。そんな3人を抱えたゴウカは白猫亭の前に迫ると、テン達は身構える。そんな彼女達に対してゴウカは意外にもゴンザレスとランファンを解放し、ガロをテンに向けて放り投げる。
『受け取れっ!!』
「うわっ!?」
「ガロ、無事ですか!?」
「うぐぅっ……!?」
咄嗟にテンがガロを受け止めると、すぐにエルマが声を掛けた。ガロは身体を震わせ、彼女の顔を確認すると口を開く。
「あ、あいつだ……あいつにやられた」
「えっ……」
「あいつは……化物だ、逃げろ……」
『はっ!!化物とは失礼だな!!』
ガロは怯えた様子でゴウカを指差し、するとゴウカは自分を化物呼ばわりしたガロに対して特に怒る様子もなく、笑い声をあげた。しかし、ガロの言葉を聞いてエルマは怒りを抱く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます