第691話 ナイVS100人
「うおおおおっ!!」
「ひいいっ!?」
「よ、避けろぉっ!!」
「ぎゃああっ!?」
ナイは調合室から運び出した薬棚を振りかざし、次々と地上へ繋がる扉へ向けて投げ込む。合計で4つの扉に薬棚を投げつけ、出入口を塞ぐ。これで薬棚を退かさなければ外へ逃げる事は出来ず、逆に言えばナイも地上への退路を失う。
唐突に現れ、地上に繋がる扉を塞いだナイに対して暗殺者は唖然とするが、そんな彼等に対してナイは拳を鳴らし、観察眼を発動して全員の様子を伺った。
(薬は……飲んでないな)
任務の際以外は暗殺者は薬を飲まない事は知っていたが、全員が薬を取り出していない事を確認してナイは内心では安堵する。しかし、喜んでいる場合ではなく、ここから先は彼は一人で戦わなければならない。
(下の階にもいかせない様にしないと……)
ここでナイは酒場内を見渡し、都合が良い事に暗殺者が離れた円卓が幾つかある事に気付き、そちらに近付く。ナイの行動を見て暗殺者達は警戒するが、それを無視してナイは階段に繋がる出入口に次々と円卓を投げ込む。
「ふんっ!!」
「うわっ!?」
「こ、こいつ……!!」
「何の真似だ、てめえっ!!」
階段を塞いで完全に逃げ道さえも封鎖したナイに対し、約100人の暗殺者は武器を構える。それに対してナイは4つの地上への出入口と階段を塞いだことで安心し、改めて暗殺者達と向かい合う。
これほどの数の人間と戦う事はナイも初めてであり、しかも一人一人が腕利きの暗殺者でもあった。かつてナイは傭兵の「疾風のダン」という男と戦った時、最初の戦闘では不意を突かれて敗北し、二度目の戦闘では勝利はしたが苦戦を強いられた。
恐らくはここにいる暗殺者の殆どが疾風のダンと近い実力を誇り、中にはダンよりも上回る技量の人間もいるかもしれない。だが、彼等を最初に見た時からナイは負ける気がしなかった。
「これだけか?仲間が他に隠れているのなら……もっと呼び出しなよ」
「な、何だと!?」
「馬鹿野郎、取り乱すな!!」
「人を殺す時は……冷徹になれ!!」
仮面越しに暗殺者はナイを睨みつけ、中には彼の挑発めいた言葉に激高する者も居たが、すぐに他の者が落ち着かせる。そんな彼等に対してナイは両手を広げ、答えた。
「かかってこい」
『っ……!!』
その言葉に全員が殺気と怒気を滲ませ、ほぼ同時に彼等はナイへ向けて手にしていた物を投げつける。それは酒場内に存在した酒瓶、フォーク、ナイフ、他にも身に付けていた短剣を投げつける物もいた。その攻撃に対してナイは予測していた様に近くに落ちていた円卓を掴む。
数十キロはありそうな円卓をナイは片腕で軽々と持ち上げて振り回す。それだけの行動で四方八方から放たれた投擲物を弾き返し、酒の割れる音やガラスの破片が飛び散る。
「ちぃっ!!」
「仕留めろっ!!」
「うりゃあっ!!」
投げるだけでは仕留めきれないと判断した暗殺者達は一番近くに存在した数名の獣人が突っ込み、ナイに向けて短剣を振りかざす。しかし、その攻撃に対してナイは突っ込んできた者の一人の身体を掴み、他の者に叩きつけた。
「ふんっ!!」
「ぐはぁっ!?」
「うぎゃっ!?」
「があっ!?」
近付いて来た者を掴み、それを力ずくで投げ飛ばして別の者に叩きつける。これを繰り返してナイは不用意に近づいてきた者を全員蹴散らし、それを見た別の暗殺者は短剣のような武器では距離が縮める必要があり、その場合だとナイに掴まれてしまう事に気付く。
「くそっ、これならどうだ!?」
「槍か……そんな物まで扱えるのか」
槍を扱う暗殺者も混じっていたらしく、ナイに向けて攻撃範囲リーチが長い槍を突き出し、これならば身体を掴まれる事はない。だが、突き出された槍に対してナイは優れた動体視力で攻撃を回避し、続けて槍を掴んで逆に引き寄せる。
「これ、借りるよ」
「なっ!?ふざけ……うおおっ!?」
「うわぁっ!?」
「ひいっ!?」
槍を掴まれた男は必死に取り返そうとしたが、槍を掴んだ状態のナイは剛力を発揮させて振り回すと、槍を掴んでいた男ごと持ち上げて別の人間に叩きつける。
男が槍を手放すとナイは手元で回転させ、槍の扱い方も実は黒狼騎士団や銀狼騎士団の訓練で基礎を学んだ。大剣以外の武器に関しても一応は取り扱った事もあり、持ち前の怪力を生かしてナイは槍を振り回す。
「ふんっ!!」
「がはぁっ!?」
「せいっ!!」
「ぐへぇっ!?」
槍を回転させながらナイは次々と暗殺者に石突を叩きつけ、この際に決して刃の部分は使わない。下手に刃で切りつけたら相手を殺しかねず、それはナイも避けたい所だった。
暗殺者は圧倒的な力で仲間達を倒すナイに対し、精神的に未熟な暗殺者は恐れを抱き、無意識に身体を震わせる。だが、中には精神が強い暗殺者も存在し、彼等はナイに対抗する手段を考える。
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