第674話 襲撃者の正体は……

「シャアッ!!」

「こいつら……白面だ!?」

「ちっ……!!」



家の中に入り込んできたのは白面を纏った暗殺者であり、彼等は短剣を両手に構えてナイ達に突っ込む。それに対してゴエモンは仕込み杖を構え、リーナの方は蒼月を構えるが、この時にナイは両手に刺剣を構えた状態で敵の数を把握した。


二階から降りてきた暗殺者の数は2名、そして窓を割って入ってきた暗殺者も2名、合計で4名の暗殺者が一階に侵入してきた。この時に観察眼を発動させてナイは暗殺者の様子を伺い、行動を起こす。



「シャアアッ!!」

「わわっ!?」

「させるかっ!!」



この中では非戦闘員であるモモに対して暗殺者の一人が飛び込み、それを見たナイは刺剣を握りしめた状態で暗殺者へと接近する。しかし、ナイがモモを庇うために行動した瞬間、別の暗殺者が彼の背後を狙う。



「シャアッ!!」

「ナイ君、危ない!?」

「ちぃっ!!」



ナイの背中に向けて暗殺者が飛び掛かり、それを見たリーナは慌てて止めようとしたが、他の暗殺者に邪魔されてしまう。ゴエモンの方も暗殺者の一人と対峙し、手助けは出来ない。


背後から迫る暗殺者の相手をすればモモは助けられず、逆にモモを助ければナイは背中から刺されてしまう。この時にナイは大剣の類は壁に立てかけているので背中は無防備の状態だった。



(甘いっ!!)



しかし、事前に心眼を発動させて背後から近付いて来た暗殺者の様子を伺っていたナイは両手の刺剣を利用し、まずは前方に存在する暗殺者に目掛けて片方を放ち、もう片方も振り返りもせずに刺剣を投げ放つ。



「ウガァッ!?」

「ギャアアッ!?」

「よしっ!!」



暗殺者の片方は腕を貫かれて壁に突き刺さり、もう片方は足に突き刺さって床に倒れ込む。それを確認したゴエモンは感心した表情を浮かべ、彼は仕込み杖から刃を引き抜き、暗殺者の一人を切りつける。



「ふんっ!!」

「ギャウッ!?」

「やああっ!!」

「ゲフゥッ!?」



リーナの方も槍の石突の部分を利用して暗殺者の頭部に強い衝撃を与え、床に倒れ込ませる。これで4人の暗殺者の内の2人は戦闘不能に追い込み、後の2人は動けない。


ナイ達は家に入り込んできた4人の暗殺者を捕まえようとしたが、この時に腕に刺剣が突き刺さって壁に固定された暗殺者は腰に差していた短刀を引き抜き、あろう事か自分の腕を切り裂いて自由を得た。



「ガアアッ!!」

「なっ!?」

「きゃああっ!?」

「ぷるんっ!?」



自分で腕を切り裂く事で自由を得た暗殺者は腕から血を流しながらもモモに視線を向け、短刀を振りかざす。それを見たナイは彼を止めようとしたが、この時にプルリンが口元から水を吐き出す。



「ぷるっしゃあああっ!!」

「ブフゥッ!?」

「うおっ……目潰しか!?」

「プルリン、よくやった!!」



プルリンが水を吐き出した事で暗殺者は仮面越しに水を浴びてしまい、少しだけ怯んでしまう。その隙を逃さずにナイは暗殺者の元に駆けつけ床に叩きつける。



「このっ!!」

「グハァッ!?」



ナイの怪力で床に頭を叩きつけられた暗殺者の男は悲鳴を上げ、やがて動かなくなった。それを確認したナイは安堵するが、すぐに切り裂かれた腕を見て慌てて治療を行う。



(勿体ないけど……仕方ないか)



この時にナイは以前にイリアから受け取った「聖水」を思い出し、それを傷口に注ぐ。聖水は聖属性の魔力を秘めた液体であり、普通に回復魔法を施すよりも効果は高く、すぐに傷口は塞がった。


腕を斬った状態では出血死する可能性もあり、聖水で傷口を塞いだのでこれで死ぬ事はない。だが、切り裂かれた腕の断面図を塞いだのでもしかしたら腕は繋がらないかもしれないが、ナイとしては命を助けただけでも感謝して欲しい所だった。



「こいつらは……白面か?」

「どうして白面がクーノの街に……」

「顔を見せて見ろ」



ゴエモンは倒れた暗殺者達の仮面を剥ぎ取り、顔を確認する。情報屋の彼ならばこの街に暮らす裏稼業の人間の顔は知り尽くしており、知っている顔ならばすぐに気付ける。


しかし、顔を確認してもゴエモンですら暗殺者達の顔は見覚えがなく、少なくともこの街に暮らす裏社会の人間ではない。しかし、それならば何処から現れたのか謎の存在だった。



「こいつらは俺の知っている顔じゃないな……何だ、この髑髏の入れ墨は?」

「あ、そうだ……実は前にも王都を襲った人たちも髑髏の入れ墨をしてたんですけど」

「こんな入れ墨、俺が知っている白面の奴等は刻んでいなかったぞ」



ゴエモンの記憶の限りでは20年前の時点では白面の人間達は髑髏の入れ墨など顔に刻んでおらず、訝し気な表情を浮かべる。家の中を襲撃した暗殺者全員が獣人族である事が判明し、この街に20年も暮らすゴエモンも知らない顔ばかりだった。

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