閑話 《ナイの特訓》

――深夜、ナイは王都の外に出向くと草原にて訓練を行う。剛力を発動させて両脚の筋力を強化させ、その状態で跳躍の技能を発動させる。この時に注意するのが決して高く跳ぶ事ではなく、前に向けて跳び込む事を重視する。



「うわぁっ!?」

「ウォンッ!!」

「あいてっ……あ、ありがとう、助かったよビャク」



訓練の際中、ナイは勢いあまって高く跳んだ時はビャクが駆けつけ、自分の毛皮を利用してクッション代わりにナイを抱き留める。どうにかビャクのお陰で怪我をせずに済んだナイだったが、ここで両脚に激痛が走った。



「つうっ……!?」

「クゥ〜ンッ……」

「だ、大丈夫……平気だよ」



連日、無茶な特訓を繰り返していたせいで両脚に負担が蓄積され、すぐにナイは再生術を発動させて治療を行う。再生術ならば大抵の怪我は治す事は出来るが、筋肉痛の場合は簡単には治せず、多少の時間は掛かる。


動ける程度まで回復すればナイは訓練を再開し、銀狼騎士団の訓練の最終日までに新しい移動法を完成させるために努力する。日中の間も銀狼騎士団の元で激しい訓練に励み、夜も新しい移動法を身に付けるための訓練を行う。正直に言えば再生術を使わなければナイの肉体はもう既に壊れていただろう。



(きついな……でも、これしか勝つ方法はないんだ)



何度失敗しようとナイは挫けず、訓練に専念する。そんな彼の様子をビャクは心配そうに見つめ、遂にナイは訓練中に躓いてしまう。



「うわぁっ!?」

「ウォンッ!?」



跳躍の際にナイは片足が挫いてしまい、勢いあまって地面に転がり込む。その様子を見てビャクは駆けつけようとするが、すぐにナイは止めた。



「大丈夫、平気だよ……ははっ、少し失敗しただけだから」

「クゥンッ……」



転んだ際にナイは片足が腫れてしまい、その様子を見たらどうみても平気には見えないが、それでもナイは訓練を辞めない。怪我を治すためにナイは再生術を施そうとすると、ビャクは足を舐めてきた。



「ウォンッ」

「ちょ、くすぐったいよビャク……あははっ」



腫れた箇所を舐められてナイはくすぐったそうな表情を浮かべ、これ以上に無理をするとビャクを心配させると判断し、訓練は中断してナイはビャクと共に身体を横にする。


星空を眺めながらナイは身体を休ませ、昔の事を思い出す。赤毛熊にアルを殺された時、ナイは無我夢中に大岩を相手に旋斧を叩きつけて身体を鍛えていた日々を思い出す。



「なんか懐かしいな……こういう感覚」

「ウォンッ……」

「よし、作って貰った弁当を食べようか」

「ウォオンッ♪」



ナイは身体を起き上げると、出かける前にヒナとモモに作って貰った弁当を食べる事にした。夜にナイが出かけようとした時、二人が気を遣って弁当を用意してくれる。



『ナイ君、無茶をしたら駄目よ?』

『たくさん元気が出る様にいっぱい作ったからね!!』



二人の優しさに感謝しながらもナイは弁当を味わおうとした時、不意に草原の方から何かが飛び跳ねながら近付いてくる光景を確認した。



「ぷるるんっ♪」

「あ、お前……また来たのか」

「ウォンッ♪」

「ビャクとすっかり打ち解けたな……」



最近は夜の草原で訓練を行っていると、以前にナイが魔力回復薬をあげたスライムも訪れる様になり、ビャクと戯れる。その様子を見てナイは心が和み、弁当を食べ終わった後は気を引き締めて直して訓練に励む――




※訓練のシーンを追加したかったので急遽加えました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る