第638話 銀狼騎士団の訓練
――マホが回復してから翌日、結局はナイは与えられた休日をゆっくりと休む事は出来なかったが、改めて次の騎士団の訓練に参加する。黒狼騎士団の次は銀狼騎士団に仮入団する事になったナイだが、ここで問題が発生した。
「えっ!?銀狼騎士団は女性しかいないんですか!?」
「ああ、その通りだ。国王陛下の計らいでリノ王女に男が近付かないように銀狼騎士団では女性しか入団は許されていない。従ってお前の場合は特別入団だ」
ナイは銀狼騎士団には女性しかいない事を始めてしり、共に訓練する場合は男性を相手にしない事を知る。その事は当日まで隠され、副団長であるリノはナイの反応をみて面白がる。
「だが、言っておくが女が相手だからといって油断すると命はないと思え。我が銀狼騎士団は聖女騎士団を参考に作り出された騎士団だ。ここにいる一人一人が一騎当千の強者揃いだ」
「な、なるほど……」
「以前に訓練でお前に敗れた騎士達も修行を積み重ねている。そこで今回の訓練は一人一人と戦ってもらうぞ」
「えっ!?」
初日の訓練内容はナイは銀狼騎士団の団員と一人ずつ試合方式で戦う事が決まり、この日からナイは連日、彼女達と毎日訓練を行う事が決まった――
――ナイは銀狼騎士団の女性団員を相手に戦い続け、訓練内容は全員の相手をするまでナイは訓練用の武器で戦う。銀狼騎士団は一人一人が得意とする武器が異なり、中にはナイが見た事もない武器を扱う者も多かった。
「どうしたっ!!噂の巨鬼殺しの実力はこの程度か!?」
「くっ……このっ!!」
「挑発に乗って不用意に攻めるな、体力を消耗するぞ」
両手に盾を装備した女性騎士を相手にナイは訓練用の木剣で対処し、相手は本物の武器を使うのに対してナイは訓練用の武器での戦闘を強要されていた。最も訓練用の武器といっても、この日のためにリンが用意した特別製の武器であり、黒狼騎士団で使っていた木剣よりも二回りほど大きく、重量もある。
木造製の大剣を手にしたナイは既に10人近くの女性騎士と戦い、相手に有効打を与えれば試合は終了する。今の所はナイは負け越しており、思っていた以上に訓練用の武器では思うように戦えない。
(この木剣、大きさは丁度いいけど軽すぎる……上手く扱えない)
折角リンが用意してくれた木剣ではあるが、旋斧や岩砕剣と比べると木剣が軽すぎて上手く扱えない。そのせいでナイは隙を突かれて攻撃を受ける。
「ふんっ!!」
「ぐふぅっ!?」
「それまで!!次!!」
ナイは腹部に拳を受けると地面に倒れ込み、リンの言っていた通りに彼女の部隊の王国騎士達は実力者が多い。以前にナイは彼女の隊の王国騎士と戦った事はあるが、あの時に戦った時より実力を上げていた。
(くそっ……まずは武器に慣れないと、それに相手の動きを読まないと)
黒狼騎士団の訓練の日々を思い返し、ナイはドリスから教わった「観察力」を頼りに訓練に励む――
――初日は結局は団員全員を相手にしてナイの勝率は3割程度であったが、その日以降からナイは一人一人戦った相手の動きを思い返し、自分がどのように動いて戦うのかを毎夜考える。リンから与えられた特製の木剣を使いこなすため、訓練を終えた後も練習を行う。
対人戦を苦手とするナイからすれば今回の銀狼騎士団の訓練は良い経験になり、ドリスの教えを忘れずにナイは「観察眼」でまずは相手の動きを見切り、行動する事を心掛けた。二日目、三日目を乗り越える頃にはナイは徐々に銀狼騎士団の王国騎士達を相手に上手く立ち回れるように成長していた。
「うおおおっ!!」
「くっ!?このっ……うわっ!?」
「ほうっ……大分動きが良くなったな」
先日では一方的にやられた両手に盾を装備する女騎士を相手にナイは有利に戦い続け、遂には先日の借りを返すばかりにナイは相手の腹部に向けて掌底を放つ。
「ここだっ!!」
「ぐはぁっ!?」
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
掌底を受けた女騎士はまるで巨人族に殴り飛ばされた様に吹き飛び、他の女騎士達が慌てて彼女を受け止める。その様子を見てナイはやり過ぎたかと思ったが、それでも戦闘不能に追い込んだ事に嬉しく思う。
(よし、大分木剣にも慣れてきた。それに剣だけに拘る必要はないんだ)
ナイは相手を殴り飛ばした際に新しい感覚を掴み、これまでの自分とは違う戦法を身に付けられるような感覚に陥る。その様子を見てリンは頷き、ここで彼女は指を鳴らすと、思いがけない人物が姿を現す。
「ナイ!!次の相手はこいつだ!!」
「久しぶりでござるな、ナイ殿」
「えっ……クノさん!?」
「クノでいいでござるよ」
「「ウォンッ!!」」
訓練場にクロとコクを引き連れたクノが現れ、彼女は両手にクナイを構えるとナイと向き合う。まさか訓練とはいえ、彼女と戦うとは思わなかったナイは戸惑う。
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