閑話 《マホの異変》

――イチノから帰還した後、マホは王城の医療室にて寝たきりの生活を送っていた。彼女はゴブリキングとの戦闘で広域魔法を使用し、その後遺症で王都に帰還してから医療室で治療を受けていた。



「はあっ……はっ……くぅうっ……」

「くそっ……こいつはもう駄目かもしれねえ。俺の手に負える状態じゃねえ」

「そ、そんなっ……」

「それが医者の言葉か!?」



今までマホの治療を行っていたのは王城に勤務する専属医師のイシであり、ベッドの横たわるマホの容体を確認し、彼は首を振る。そんなイシの言葉にマホの弟子であるエルマとゴンザレスは激昂する。



「医者だからって何でもできるわけじゃねえっ!!今のこの人は魔力を消耗し過ぎて意識さえも保つ事が出来ないんだ!!だが、その肝心の魔力を回復させる手段がない!!」

「薬で何とかならないのか!?」

「無駄だ、魔力回復薬の類は魔力を回復する機能を強化させるだけにしか過ぎねえ……だけど、この人の場合はその機能が殆ど損なわれてるんだ!!のせいでな!!」

「うっ……!!」



イシはマホを仰向けにさせ、彼女の服をはだくと背中には見るもおぞましい光景が広がっていた。それを見たエルマとゴンザレスはマホの悲惨な姿に目を背ける事しか出来ず、イシでさえも頭を抱える。



「こいつのせいでこの人は自力で魔力を回復させる事も出来ねえ……今まではどうにか薬で誤魔化してきたが、もう無理だ」

「そんな……」

「助ける手段があるとすれば……イリアが作っている薬を完成させる事だ。あれを使えばこの人の魔力も元に戻せるかもしれねえ」

「イリア魔導士の……!?」

「そうだ、あいつは今新しい薬を作っている。なんでもそいつを飲めば市販の魔力回復薬なんかとは比べ物にならない効果を発揮するらしい。まあ、詳しいはあいつから聞き出せ」

「それは本当か!?」

「ゴンザレス!!すぐに行きますよ!!」



エルマとゴンザレスはイシの言葉を聞いて駆け出し、研究室にいるはずのイリアの元へ向かう。残されたイシは机の上に置かれた大量の空の薬瓶に視線を向け、舌打ちを行う。


これまでイシもマホを回復させるために手段を尽くしたが、もう彼女の身体は限界だった。仮に魔力を回復させたとしてもマホはもう長生きは出来ない事は確実だった。



「くそっ……何がだ。ふざけやがって!!」



空の薬瓶をイシは握りしめ、壁に向けて叩きつける。彼はマホの背中に視線を向け、忌まわしい物を見るような視線を向けていた。





――マホの背中には人面のような痣が存在し、その痣のせいで彼女は魔術師として一番大切な器官が麻痺している状態だった。

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