過去編 〈アルとネズミ〉
――これはまだアルがナイと出会う前、彼は知り合いの女性の元に訪れていた。その相手は元は冒険者であり、アルとも古い付き合いのある女性だった。
「久しぶりだな、ネズミ……子供は元気か?」
「あ〜あ、止めてくれよ。最近は夜泣きが酷くてこっちは寝不足なんだよ」
「ははは、そうかそうか」
とある酒場にてアルはネズミと酒を飲む。実はこの二人は昔からの付き合いであり、一時期は一緒に行動していた時期もあった。若い頃のネズミは美人でアルも彼女を異性として意識していた時期もある。
実はこの二人は付き合っていた時期もあるが、色々とあってお互いに離れる事にした。それでも年に一度だけ二人は顔を合わせ、酒を酌み交わす。
「それにしてもまさかお前がガキを拾うとはな……」
「仕方ないだろうが、あんな場所に捨てられている子供を放っておけるわけないだろ……」
「でも、孤児院に預けようとは思わなかったのか?」
「……最初に拾った時、あいつはね。あたしの指が折れるぐらいに握りしめてきたのさ。それであたしも情が移ってね、この子はあたしの事を親だと思い込んだと気付いたのさ」
「なるほどな……一度、会ってみたいな」
「おう、後で会ってみな。きっとあの子も喜ぶよ」
グラスを交わしながらアルとネズミは談笑し、子供の話で盛り上がる。ネズミは自分の子供の話をするときは表面上は面倒くさそうな態度を取るが、実際は嬉しそうな表情を浮かべていた。
(子供か……俺達の間にも子供が生まれたらどうなってたんだろうな)
幸せそうに子供の事を語るネズミに対してアルは少しだけ寂しい思いを抱くが、ネズミが幸せならば十分だった。一方でネズミも久しぶりに会えたアルに対し、これからどうするのかを問う。
「そういえばあんたはまだ冒険者稼業を続けているのかい?」
「ん?ああ、まあな……といっても、そろそろ引退しようと思ている」
「そうなのかい?ドルトンの奴はどうしてるんだい」
「あいつは商人の娘に惚れちまってな。自分も商人になると言い出して困ってるよ」
「ははは、またかい。相変わらず惚れっぽい男だね」
ネズミはドルトンの話を聞いて大笑いし、実は昔に彼女はドルトンから告白された事もあった。結局はドルトンとは付き合う事はなかったが、今では良い友達だった。
「さあ、今夜はとことん飲み明かすよ。今日は寝かせないからね、覚悟しておきな」
「はははっ……お手柔らかにな」
二人はグラスを合わせ、宣言通りに夜明けまで飲み明かした――
※意外なアルとネズミの関係……でも、この二人が結婚していたらナイとテンには出会えなかったでしょうね(´;ω;`)
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