閑話 〈イチノの人々は……〉
――ゴブリンの軍勢によって壊滅寸前にまで追い詰められたイチノではあるが、現在は他の街から復興のために人員が派遣されていた。まだゴブリンの軍勢の残党も残っている可能性もあるため、兵士も配置される。
イチノの人間の大半はいなくなってしまったが、それでも半分は残った。街の人々は復興のために活動し、そこにはナイに関わる人達の姿もあった。
「これでよし、坊主。もう痛くないだろう?」
「うん、ありがとうおじちゃん!!」
「あ、ありがとうございます……でも、その、お金の方が……」
「ああ、いいって。こんな状況だしな、金なら余裕が出来た時に払ってくれよ」
「あ、ありがとうございます!!」
イーシャンは医者の稼業を再開した。家を失った人間も多く、金の余裕がない人間達には無償で治療を行う。最も金に余裕がある人間にはしっかりと受け取る。
「おい、なんで金を払わないといけないんだよ!?さっきの親子は無料だったろうが!?」
「うるせえっ!!てめえ、他の街から来た人間だろうが!!金を払わねえなら警備兵に突き出すぞ!!」
「ひいっ!?く、くそっ……覚えてろよ!!」
「いいから出ていけ!!」
「うぎゃあっ!?」
金を払わない人間には容赦なく追い払い、断られた人間は悪態を吐くが、そんな人間にイーシャンは蹴り飛ばす――
――その一方でドルトンの元には彼の元を去っていた人間が集まり、彼等はドルトンを見捨てて逃げ出した事を謝罪する。
「か、会長!!申し訳ありませんでした!!」
「お、俺達……もう一度あなたの元で働かせてください!!」
「図々しい事を言っているのは分かりますけど……」
「いや、よくぞ戻ってきてくれた。儂は嬉しいぞ」
彼等は元々は他の街の人間達であり、ゴブリンの軍勢が迫ってきた時に逃げ出した者達である。彼等は他の街に家族を残しており、ドルトンの元に働きに出ていた。だからこそ彼等は死ねば家族が残されるため、どうしても死ぬわけには行かなかった。
ドルトンも彼等の気持ちを察し、怒ったりはせずに受け入れる。こうしてドルトン商会は再会し、後にドルトン商会はイチノどころか他の街にも名前を知られるほどの大商会となる――
――陽光教会ではインはヨウの許しを経て修道女へと戻り、一からやり直すために彼女は髪の毛を短くまとめた。そしてヨウと共に復興作業を行う人々のために炊き出しを作る。
「イン、用意は出来ましたか?」
「はい、ヨウ司教……参りましょうか」
「ええ、行きましょう」
準備を整えた二人は教会の外で待つ人々のために食事を与える。現在の教会には家を失って生き場所を失った者達が集まり、そんな彼等のために二人は毎日炊き出しを行う。
陽光教会の修道女も大分減ってしまったが、それでも残っている人間同士で力を合わせる――
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