閑話 ドルトンの護身術
※今回の話は本編で取り入れようと考えていたんですが、色々とあって出すのが遅れてしまい、閑話となりました(´;ω;`)
――時は遡り、飛行船が出立する前にナイはドルトンの元へ訪れて謝罪を行う。それは彼の大切にしていた腕鉄鋼を勝手に改造した事を謝るためであった。
「ごめんなさい、ドルトンさん。折角貰った腕鉄鋼を改造しちゃって……」
「何じゃ、そんな事を気にしておったのか。それはお主にあげた物なのだから好きに使ってくれて構わんぞ」
「でも……」
「確かにその腕鉄鋼には儂にも色々と思い出はある。しかし、大切な思い出は心の中から消える事はない。だから気にする必要はない、その腕鉄鋼をお主に託した時からそれはもうお前さんだけの物になったんじゃ」
「ドルトンさん……」
ナイはドルトンの言葉に安堵し、ドルトンならば許してくれると信じていたが、彼の言葉を聞いて安心する。しかし、ドルトンの方は腕鉄鋼を確認してある事に疑問を抱く。
「それにしてもこの腕鉄鋼、見た限りだと随分と綺麗だのう」
「え?あ、一応は手入れしてましたから……」
「しかし、全く凹みもしておらんとは……余程大切に扱っておるのか、それとも頻繁に鍛冶師に修理を頼んでおるのか?」
「えっ……凹む?」
「ん?」
「えっ?」
ドルトンとの会話でナイは違和感を抱き、ここで彼の治療を行っていたイーシャンが呆れた表情を浮かべながら口を挟む。
「おい、ドルトン……お前、まさかナイの奴がこいつを使って殴って戦ってると思い込んでるんじゃないだろうな」
「はっ……?いや、しかし……普通は殴るじゃろう?」
「殴るわけないだろうが、この馬鹿!!普通はこいつは防具として扱うんだよ!!」
「え、あの……どういう意味ですか?」
イーシャンの言葉を聞いてドルトンは呆気に取られた表情を浮かべるが、そんな彼に対してイーシャンは呆れた表情を浮かべ、事情を説明してくれた。
――まだドルトンが冒険者だった頃、彼は「鋼腕のドルトン」という渾名が付けられており、その理由は彼は本来ならば防具として扱う腕鉄甲を武器として扱い続けた事が原因だという。
彼が扱う腕鉄甲はもうただの防具ではなく、武器として扱う。何時の間にか人々の間では彼は「鋼腕」と呼ばれるようになり、自然と彼が身に着けている腕鉄甲も「腕鉄鋼」と呼ばれるようになった。
「じゃあ……鋼鉄の腕で殴り込むから鋼腕と呼ばれるようになったんですか?」
「そうだぞ、いっておくがアルもたいがいだったが若い頃のこいつもアルに負けず劣らずのやんちゃものだったんだぞ」
「は、はははっ……そ、そうじゃったかのう?」
ナイは腕鉄鋼の名前の由来を初めて知り、同時にドルトンが若い頃はそんな無茶な戦い方をしていたと知って戸惑いを隠せない。昔、アルからドルトンの昔話を聞かされた時はからかわれていると思ったが、どうやら全て事実だったらしい。
「それじゃあ、爺ちゃんが若い頃はドルトンさんと一緒に女の子をはべらしていたという話も……」
「そういやそんな事もあったな……あの時は俺もガキだったから羨ましかったぜ」
「こ、これ!!余計な事を言うな!!ナイよ、儂はそんな不埒な真似はせんぞ!!それよりもほれ、儂が冒険者時代の技を教えてやろうではないか!!」
「え、ドルトンさんの技!?」
話題を逸らすためにドルトンはナイに技を押してくれる事を提案し、半分は誤魔化しのためだが、もう半分はドルトンなりにナイの事を心配しての発言だった。
「うむ、常に自分の傍に武器があるとは限らん。ならばお主も護身術程度は覚えて置かんとな」
「な、なるほど……」
「別にナイなら腕力だけで何とかなると思うが……」
「何を言っておる、相手は必ずしも人とは限らん。腕力だけでは通じない敵も現れた時はどうする?それに場合によっては弱い相手と戦う場合もある。そのような敵の場合、わざわざ大怪我を負わせる必要はないじゃろう。」
「なるほど……それは確かにそうですね」
確かに魔物が相手ならばナイの腕力だけでは通じない敵や、逆に弱すぎる相手と相対した時の対処法を覚えておいて損は無い。実際に先日の飛行船でナイに襲い掛かってきた暗殺者達が良い例であり、ナイは身を守る術としてドルトンから護身術を学ぶことにした。
最も時間に余裕がないので今回教える内容はドルトンが現役の時によく利用していた技であり、彼はナイに「掌底突き」を教える事にする。
「よいか、ナイ。掌底の場合だと拳よりも威力が落ちると思われがちじゃが、場合によって拳で殴り込むよりも効果的に相手を倒す事が出来る時もある。頭や顎への攻撃をすれば脳震盪を起こすかもしれんからな」
「なるほど……やってみます」
「儂の腕鉄鋼は掌の部分は鉄に覆われておらんからな、そこを利用して上手く狙い撃つんじゃ」
「はい!!」
ナイはドルトンから手ほどきを受け、飛行船が出立する時間まで指導を受けた――
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