第538話 最強の暗殺者
「……ああ、もう!!むしゃくしゃする!!」
ルナは頭を掻きまわし、彼女は気分を晴らすために立ち上がると、羊皮紙の束を取り出す。羊皮紙にはこの周辺に目撃が確認されている賞金首が記されており、憂さ晴らしも兼ねてルナは賞金首を狩ろうと考えた。
そろそろ路銀も尽きかけていたので稼ぐには丁度良く、今日は夜通し歩き回ってでも賞金首を見つけようかと考えた時、不意に彼女は嫌な気配を感じて振り返る。
「誰だ!?」
『……ほう、気づいたか』
彼女は戦斧を手にして振り返ると、そこには異様な光景が広がっていた。それは地面に大きな穴のような物が存在し、その穴の正体が「影」だと知る。
影は建物の壁へ移動を行うと、そこから一人の人物が姿を現す。全身を漆黒のフードで覆い隠しているが、その手には日本刀を手にしていた。その人物を見た瞬間、ルナは嫌な予感を抱き、臨戦態勢に入った。
(何だ、こいつ!?)
直感でルナは目の前に現れた謎の人物に恐怖し、距離を取ろうとした。しかし、壁に広がっていた影が一瞬にして移動すると、ルナの後方へと移動を行い、今度は別の人物が姿を現す。
『おっと、逃がしはしない』
「なっ!?」
再び影から現れた謎の人物にルナは動揺し、前後を塞がれてしまう。彼女は戦斧を構えるが、狭い路地裏では長物の武器では振り回せず、仕方なくルナは拳を握りしめて背後に現れた人物に殴り掛かった。
「やああっ!!」
彼女の全力を込めた拳は路地裏を塞ぐ人物の腹部に目掛けて放たれ、もしも普通の人間ならばひとたまりもなく吹き飛んでいただろう。しかし、殴りつけた瞬間にルナは異様な感覚に襲われた。
拳は確かに的中したはずなのに何故か衝撃を吸収され、彼女は唖然とした。この時に彼女はフードの隙間から空いての顔が見えたが、この時に彼女は驚愕する。
「お前は……!?」
『殺せ、イゾウ」
「承知」
既にルナの背後にはイゾウと呼ばれた暗殺者が迫っており、彼はルナに目掛けて刃を振りかざす。この時、彼女は反射的に戦斧を手にしたが、路地裏では振り回せない。
(殺される!?)
既にイゾウは背後まで迫り、ルナへ目掛けて刃を突き出そうとしていた。このままではルナは殺されると考え、どうにかこの状況を脱する方法を考える。
こんな場所で自分は死ぬわけにいかず、彼女は迫りくる刃に対して目つきを鋭くさせ、騎士団に所属していた時は禁じられていた能力を発動した。
(死ぬわけには……いかない!!)
次の瞬間、ルナの身体に血管が浮き上がると彼女は戦斧を薙ぎ払う。当然だがそんな事をすれば建物の壁に戦斧が衝突してしまう。しかし、それも構わずにルナは戦斧を振り払い、建物の壁ごと破壊してイゾウに戦斧を放つ。
「があああっ!!」
「っ!?」
『ちっ……』
建物を破壊しながらルナはイゾウへ目掛けて刃を放つと、咄嗟にイゾウは空中に跳躍して回避を行い、背後に存在した人物は舌打ちして距離を取る。
ルナは全身に「白炎」を纏い、聖属性の魔力を纏った状態でイゾウを睨みつけた。現在の彼女は「強化術」を発動させ、限界まで身体能力を強化していた。
「ふうっ……ふうっ……」
「強化術か……だが、長続きはできまい」
「がああああっ!!」
イゾウの言葉が聞こえていないのかルナは興奮状態で戦斧を振りかざし、イゾウに目掛けて放つ。この際にイゾウは日本刀を構えるが、もう一人の人物が声を掛けた。
『イゾウ、受けるな!!』
「っ!!」
「あああっ!!」
もう一人の人物の声に反応したイゾウは後方へ下がると、直後にルナの放った戦斧が地面へめり込み、その威力はとても受け切れる攻撃ではない。イゾウは改めて距離を置くと、ルナはイゾウに目掛けて突っ込む。
「あああっ!!」
「獣めっ……」
獣の如く自分に突っ込んでくるルナに対してイゾウは刀を構え、突き刺そうとしてきた。それに対してルナは小柄な体型を生かして体勢を屈めると、彼の突きを紙一重で躱してイゾウに戦斧を放つ。
振り払われた戦斧は再び周囲の建物の壁を崩しながらイゾウの元へ向かい、この際にイゾウは空中へ跳躍するとルナの身体を乗り越えて回避を行う。
「ふんっ!!」
「ちっ……馬鹿力め」
『イゾウ、ここまでだ。今回は退くぞ』
「……仕方ない」
イゾウはルナの力を目にして日本刀を鞘に納めると、もう一人の人物の元へ向かう。この際に二人に目掛けてルナは戦斧を振りかざし、投擲を行う。
「逃がすかぁっ!!」
『……もう遅い』
投げ放たれた戦斧は回転しながら二人の元へ向かうが、次の瞬間に地面に大穴のように影が広がると、二人の身体は影に飲み込まれた。
ルナが投げた戦斧は影に飲み込まれた二人の頭上を通過し、そのまま向かい側の建物へと衝突した。その光景を見たルナは呆気に取られるが、彼女は慌てて影が広がる場所へ向かう。
「待て!!」
『もう遅い』
影はそのまま縮小化し、やがて見えなくなってしまう。残されたルナは悔し気な表情を浮かべるが、直後に兵士の足音が鳴り響く。
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