第531話 地の底に眠るのは……

「――何だ、これ……?」

「剣、か……」

「そんな馬鹿な……お、大きすぎますわ!?」



ドリスの言う通り、穴底に突き刺さっていた剣は最早武器の範疇を越え、正に建造物という表現が正しい。ナイが所有する岩砕剣の何十倍もの大きさを誇り、仮に巨人族が10人いようと引っこ抜く事は出来ないだろう。


巨大な剣というよりも剣を模した建造物という表現が正しく、ナイ達は恐る恐る建造物に近付く。どうしてこんな場所にこのような建造物が存在するのかは不明だが、位置的にこの山の中心部に建造物は元々埋まっていた事になる。



「馬鹿な……何なのだ、これは……」

「いったい誰が何の目的でこんな場所にこんな建造物を……」

「いや、それよりもどうしてゴブリン達はこんな場所にこんな物を掘り起こそうとしていた?」



アッシュもドリスもリンも建造物を前にして何も分からず、謎は深まる一方だった。だが、ナイは建造物の周囲に散らばっている者に気付き、それは魔力を失われた魔石の破片だと気付いた。



(ここいらに落ちている……いや、埋まっている魔石は全部魔力が無くなっている。でも、どうして?)



魔力を失った魔石を拾い上げたナイは不思議に思い、不意に剣の形をした建造物に視線を向ける。そして試しにナイは自分の腕輪に装着している魔石に視線を向け、試しに地属性の魔石を取り外す。



(まさか……)



ナイは魔石を取り外した時、いつの間にか地属性の魔石だけが色が薄くなっている事に気付く。しかも建造物に近付く程に色が急速的に失われ、この事からナイはこの建造物が魔力を吸い上げている事に気付く。


試しにナイは建造物に近付き、魔石を放り込む。すると魔石は空中にて魔力を完全に失ったのか色を失い、建造物に衝突した瞬間に砕け散ってしまう



「まさか……この建造物、どうやら地属性の魔力を吸い上げるみたいです」

「何だと……!?」

「魔力を吸い上げるなんて……それでは魔剣ではないですか!?」

「そんな馬鹿な……では、これは魔剣だというのか!?」



魔石の魔力を建造物が吸い上げている事が発覚すると、全員が驚愕の表情を浮かべた。これほどの巨大な建造物が魔剣など有り得ず、仮にゴブリンキングやゴーレムキングだろうとこんな巨大な剣を扱えるはずがない。


しかし、実際にこの穴で見かけられる魔石の類はこの巨大な建造物が魔力を吸い上げている事は間違いなく、誰が何の目的でこんな物を山の中に埋めていたのか不明だが、ゴブリンがこの場所を掘り起こしたのは間違いないかった。



「まさか、ゴブリン共はこの中にこの建造物が埋まっている事に気付いていたのか?だが、どうしてこんな物を……」

「ここまで掘るのにどれだけの時間を労したのか……そもそも、これは本当に魔剣なのか?」

「有り得ませんわ、こんな大きさの武器なんていくら何でも作れるはずがありません!!」

「ね、ねえ……皆、これを見て!!」

「どうした!?」



リーナが声を掛けると、全員が彼女に振り返る。すると、彼女は信じられない表情を浮かべながら建造物の近くの地面を指差す。


彼女の行動にナイは不思議に思うが、光球で彼女の傍を照らすと、建造物付近の地面がである事が判明する。何故か建造物の周辺の場所だけが緑色の地面に覆われていた。



「あん?どうなってんだ、どうしてここら辺だけ土の色が違うんだ?」

「……これ、土じゃないと思う」

「えっ……?」

「だって、触ってみてよ……これ、生暖かいよ?」

「まさか……!?」



自分でも信じられない表情を浮かべながらリーナは答えると、他の者達は恐る恐る地面に触れる。確かに彼女の言う通り、緑色の箇所の地面は妙に生暖かく、それに感触が違う。



「ほ、本当ですわ。確かに普通の地面とは違います……」

「それに……振動しているのか?」

「いや、振動というよりも……これは、鼓動か?」

「馬鹿なっ……!?」



緑色の地面に触れた者達は僅かに地面が揺れている事に気付き、すぐにアッシュは耳を地面に押し当てると、それは心臓の鼓動のような音を耳にした。




――この時点で大半の人間は気づいていた。しかし、あまりの事実に理解が追いつかず、真実から目を背けようとしていたのかもしれない。だが、地面だと思っていた正体は紛れもなく生物の肉体であり、この場所に巨大な生物が埋まっている事が判明する。




大きさから考えても生物の体長は先に倒したゴブリンキングよりも遥かに大きく、しかも巨大な建造物だと思われていた剣もただの建造物などではなく、地中に埋まっている生物の肉体に就く刺さっている事が判明した。


信じがたい事に山の中に埋もれていたのは巨大生物とその肉体に突き刺さる巨大な魔剣だと判明し、ナイ達はこの衝撃の事実に理解が追いつかず、愕然とした。



※前話が短すぎたので早めに続きを投稿しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る