閑話 〈ガオウの本音〉

「――いってぇえええっ!!痛い、痛い、痛い!?」



ナイ達の元を離れたガオウは船に戻った後、自分の部屋のベッドの上にて転がり込み、地面に叩きつけられた際に強打した背中を抑える。彼は一人で裸になって背中に傷薬を塗り込むが、想像以上の痛さに涙を流す。



「ちくしょう、あの坊主……少しは手加減しろ、死ぬかと思っただろうが……!!」



試合の際中や別れた時は強がって何ともない風に振舞っていたガオウだったが、実際の所は受身を取ったとはいえ、地面に背中から倒れ込んだ時は死ぬほど痛い思いをした。


黄金級冒険者としての面子もあるので表向きは平然と振舞っていたが、実際の所はあのまま試合を続けられていたらガオウは勝てる気はしなかった。もしもハマーンが試合を止めなければ今頃はガオウは背中の痛みに耐え切れずに勝負に集中できずにまけていたかもしれない。



(何なんだ、あの坊主は……くそっ、やっぱり只者じゃなかったか)



最初からガオウはナイが只者ではない事は見抜いていたが、それでも彼が勝負を挑んだのは理由がある。それは共に戦う仲間である以上は彼の実力を見極める必要があり、だからこそ喧嘩腰で彼に試合を申し込んだ。


別にガオウ自身はナイの事が気に入らないから喧嘩を売ったというわけでもなく、むしろ彼の実力が気になったからこそ敢えて試合を申し込んだ。ガオウの目的はあくまでもナイの実力を計るためであり、本気で彼と戦うつもりなどなかった。



(ちょ、調子に乗り過ぎたな……流石にこんな姿、他の奴に見られるわけにはいかねえ……)



必死にガオウは自分の怪我を治すために背中に薬を塗ろうとするが、この調子では明日の戦闘にも影響が残るかもしれない。本音を言えばナイの回復魔法を受けたかったが、あんな状況では他の人間に弱みを見せるわけにはいかず、悪態を吐いて去るしかなかった。



(くそ、あの爺さんめ……俺の怪我の事を見抜いてわざと試合を止めたな。悔しいが、感謝するしかないか……)



ハマーンが試合を止めた時はガオウは不服を申し立てたが、実際の所はあそこで試合を止めてくれなければ恥をかいたのはガオウである。仮に試合を続けていたらガオウはほぼ確実に負けていただろう。



「ふうっ……ふうっ……今日は、もう休むか」



どうにか薬を塗り終えたガオウは上半身が裸の状態でベッドに横たわり、明日まで身体を休める事にした。流石に今日はもう動く気にはなれず、背中の痛みが治まるまでゆっくりと身体を休める事にした。



(あの坊主……思っていた以上に大物になるかもな)



意識を失う前にガオウは口元に笑みを浮かべ、改めて彼はナイの事を認め、いずれ彼がとんでもない大物になる事を確信した――




※ガオウも割とギリギリでした(笑)

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