第439話 船の整備
「では、儂等はこれから魔石の交換を行う。精密な作業だから儂等だけでやらせてもらうぞ」
「頼むぞ。その間に我々は周囲の調査を行う」
「うむ、では行くぞお前達!!」
『おうっ!!』
ハマーンは船の整備のために行動を開始すると、アッシュは王国騎士と兵士を呼び集めて周辺の探索を開始する。湖に滞在すれば襲われる可能性は低いと思うが、この際にリュウ湖の調査も行う。
リュウ湖の周囲は森が広がっており、その森には魔物も生息している。但し、人に害を為す様な魔物は今までに確認されていない。だが、最近は世界各地で魔物が増殖化している傾向があるので油断はできない。
小船を下ろして兵士と騎士が岸辺へと移動を行い、周辺の調査を行う。この際にナイはリーナと共に行動を行い、彼女と共に森の調査を行う。
「どう、ナイ君?何か感じる?」
「気配は感じないね……こういう場所なら一角兎でも住み着いていそうなのに」
森の中を歩きながらナイ達は周囲を常に警戒し、この際にナイは気配感知と索敵の技能を発動させ、魔物がいないのかを確認する。この途中、採取の技能を利用して森の中に生えている素材の回収も行う。
「あ、見て来れ……三日月草だよ。こんな場所にも生えてたんだ」
「へえ、それって薬草だよね。持って帰ろうよ」
「そうだね……あれ、でもなんだろうこれ。ちょっと枯れてる……?」
歩いている最中にナイは三日月草と呼ばれる薬草を発見し、この薬草は名前の通りに三日月のような葉の形をしている事からそのような名前が名付けられている。ちなみに満月の形をした満月草なる薬草も存在し、どちらも月の光を浴びると光り輝く性質を持っている。
三日月草を発見したナイは取り上げようとした際、三日月の葉をよくよく観察すると先端の部分が枯れていた。それに気づいたナイは何となくだが嫌な予感を覚え、周囲の様子を伺う。
(魔物の気配は感じない……けど、変な感じがする)
薬草に触れる事に危険を感じたナイは周囲を「観察眼」の技能でよく観察すると、すぐに薬草の近くに生えている樹木に視線を向ける。よくよく観察しなければ分からなかったが、樹木の表面に人間の顔のような「人面」の皺がある事に気付く。
「これは……」
「ナイ君?どうしたの?この薬草がどうかした?」
「触るな!!」
ナイが薬草を採取しない事に疑問を抱いたリーナが指先で薬草に触れようとした瞬間、ナイは彼女の腕を掴む。しかし、ナイの異変に気付いたのかあるいは大声を上げた事で目を覚ましたのか、樹木の人面は目元を光り輝かせる。
――ジュルルルッ!!
奇怪な鳴き声が響き渡り、薬草の傍に生えていた樹木は全身を震わせると、この際に薬草だと思われた植物が伸びてきてナイとリーナの身体に巻き付こうとしてきた。
「危ない!!」
「きゃっ!?」
咄嗟にナイはリーナを突き飛ばすと、薬草だと思われた植物が蛇のようにナイの身体に巻き付き、そのまま力ずくで持ち上げる。思っていた以上に強い力で締め付けられ、ナイは呻き声を上げる。
「ぐあっ……!?」
「ナ、ナイ君!?このっ、離せっ!!」
「ジュラァッ!!」
拘束されたナイを見てリーナは槍を振りかざし、彼を拘束する植物を切り裂こうとした。しかし、どうやらナイを拘束した植物は樹木と繋がっていたらしく、彼女が攻撃を仕掛ける寸前にナイを拘束する植物は樹木の元へ向かう。
人面が浮き上がった樹木は枝をまるで人間の腕のように動かし、そのままナイを抑え込む。その様子を見てリーナは魔物の正体に気付き、彼女は驚愕の声を上げた。
「まさか……
「ぐああっ!?」
「ナイ君!!この、離せっ!!」
リーナはナイを拘束した樹木の正体を魔樹と呼ばれる植物型の魔物だと見抜くと、彼女は蒼月を振りかざしてナイを抑え込む枝を切り裂こうとした。しかし、その前に魔樹は無数の蔓を全身から生み出すと、リーナを拘束しようと放つ。
「ジュラアアアッ!!」
「うわわっ!?」
植物の蔓がリーナへ目掛けて放たれ、この時に彼女は後ろに下がりながら槍を振り回して蔓を切り裂く。しかし、いくら切り裂こうと蔓は延々と伸びて彼女を拘束しようとする。
このままでは助ける所か捕まってしまうと判断したリーナは距離を取ると、ここで魔樹は地面に埋まっている根を引っこ抜き、彼女の元へ向けて近付く。
「ジュラァアアアッ!!」
「嘘っ……歩けるの!?」
移動速度はそれほど早くはないが、魔樹は自力で移動する事が出来るらしく、リーナへ向けて接近する。しかし、ここで蔓に拘束されていたナイが目を見開き、我慢の限界を迎えた彼は剛力を発動させ、力ずくで脱出しようと試みた。
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