閑話 〈火竜の素材回収〉
――時は遡り、まだゴブリンキングの脅威が確認される前まで戻る。火竜とゴーレムキングの討伐が果たされた後、王国は即座に軍隊を派遣して素材の回収を行う。竜種の素材となると滅多に手に入る代物ではなく、他の者にその存在を知られる前に早急に回収が行われた。
数千人の兵士が赴き、その中には多数の小髭族や巨人族も混じっていた。彼等は火竜の死骸を解体し、荷車に乗せて運び込む。幸いというべきか火竜が目覚めた影響で道中で周辺一帯の魔物は寄り付かないが、時が経過すれば魔物達も戻ってくるだろう。
「おいおい、こいつはどうなってんだ……これが火竜の経験石で間違いないんだよな?」
「ああ、大きさから考えてもこいつしかありえないが……色を失っているな。これだとただの馬鹿でかい硝子と変わりないぞ」
火竜の死骸から採取された経験石は完全に魔力を失っており、もう経験石としての価値はなくなっていた。魔力を失った経験石は壊れやすく、破壊したとしても経験値を得る事はない。
「こいつ、どうする?持って帰っても役に立たないと思うが……」
「おいてくわけにもいかないだろ。持って帰るしかないな……」
「おい、こっちにゴーレムキングとやらを見ろよ!!あちこちから魔石が出てきたぞ!!」
ナイに経験石を破壊されたゴーレムキングの死骸からは多数の火属性の魔石が発見され、これらはゴーレムキングが今までに摂取した魔石だと思われた。どうやら経験石以外にも多数の魔石を体内に隠し持っていたらしく、それらの魔石はまだ魔力が残っている様子だった。
火竜の素材の中で最も価値がある経験石は残念ながら色を失い、この状態では価値はない。その一方でゴーレムキングから良質な火属性の魔石が大量に見つかり、それを見た者達は呆れてしまう。
「全く、火竜よりもこいつの方がよっぽど価値があるんじゃないのか?」
「その通りだな……そういえばここ、思っていたよりも熱くないな」
「ああ、確かに……念のために防熱性の高い装備で来たのにむしろ涼しい方だな」
グマグ火山は討伐隊が到着した時は火山が噴火したばかりであり、異様な熱を放出していた。しかし、火竜とゴーレムキングがいなくなった影響か、火山は落ち着いて現在は本来の気候を取り戻していた。
防熱性の高い装備できたというのにグマグ火山の気候が落ち着いていた事で回収部隊は拍子抜けするが、この際に彼等はある物を発見した。それは火竜の死体の傍になにやら奇妙な物が落ちていたのだ。
「ん?なんだ、こいつは……」
「どうした?」
「いや、なんか変な物を見つけたんだよ……こいつは、何だ?」
火竜の死骸の傍には奇妙な破片が落ちており、その正体が「卵の破片」である事に気付く物はいなかった――
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