第395話 最後の希望
『ゴガァアアアッ……!!』
「いかん、もう胸元の部分は溶け始めている!!何とかしなければ……!!」
「な、何とかって言われても……」
「どうすればいいんだい!?」
既にゴーレムキングの胸元の宝石部分を中心に氷が解け始め、このままでは数十秒ほどで全身の氷が解けてしまう。駄目元でまだ凍り付いている部分にテン達は攻撃を加えた。
「この、ぶっ壊れな!!」
「ていっ!!」
「はああっ!!」
退魔刀、如意斧、烈火が凍り付いた箇所に攻撃すると、凍り付いた箇所は硬度が落ちているらしく、3人の攻撃によって右足の部分に罅割れが生じた。このまま攻撃を続ければ破壊は出来るだろうが、仮に破壊してもその後が問題だった。
残された者達でまともに動ける人間はもう20名程度しか存在せず、彼等が頑張って攻撃を加えてもせいぜい両足を壊すのが精いっぱいでゴーレムキングを倒すには至らない。ゴーレムキングを倒すためには胸元の核を破壊するしかない。
「マジク、奴の胸の宝石を破壊できないのか!?」
「……無理です、前に魔法で攻撃を仕掛けた時、奴は儂の雷撃を受けたはず。しかし、あの宝石には傷一つ入っていない……!!」
昨夜にマジクは雷属性の砲撃魔法でゴーレムキングを攻撃したが、経験石は掠り傷さえない。恐らくは魔法耐性が異常なまでに高く、普通の魔法攻撃では経験石を破壊できない。
ゴーレムキングの経験石を破壊する方法があるとすれば物理攻撃しかなく、それも生半可な威力ではなく、強烈な攻撃を加えれば破壊できる可能性はあった。
「俺が破壊します!!」
「ナイ、やれるのかい!?」
「岩砕剣なら破壊できるかもしれません!!」
「でも、あそこまでどうやって……」
ナイは既に岩砕剣を回収しており、この岩砕剣ならば空中でも地属性の魔力を送り込む事で重量を増加させ、強烈な一撃をゴーレムキングに叩き込める可能性は高い。
いくら魔法に耐性があろうと、岩砕剣の場合は重量その物を増加させる。だから叩きつけた瞬間は超重量の攻撃が繰り出せるはずだった。
「ナイ!!私が飛ばす、準備をして!!」
「ミイナ、頼んだ!!」
「よし、それならあたし達はこいつの両足をぶっ壊すんだよ!!少しでもナイが届きやすいようにこいつを縮めな!!」
『うおおおおっ!!』
テンの言葉を聞いて他の王国騎士達もまだ凍り付いている両足に向けて攻撃を加え、ナイが飛び込む前に少しでもゴーレムキングに損傷を与える。この時にリーナとヒイロも駆けつけ、二人は同時に攻撃を繰り出す。
「凍り付いた状態なら私の魔法剣だって……行きます!!」
「私だって……やああっ!!」
ヒイロは火炎剣を発動させ、炎を刃から噴出させる事で凍り付いた足に強烈な一撃を叩き込み、リーナも槍を繰り出す。二人の強烈な一撃によって左足全体に罅割れが広がり、もう片方の右足もテンが渾身の一撃を放つ。
「ぶっ壊れなっ!!」
強化術を発動させ、彼女は全身から白炎を放ちながら強烈な一撃を繰り出す。その結果、両足が同時に崩れてゴーレムキングの胴体が地面に沈む。
『ゴガァアアアッ……!?』
「ナイ、今なら!!」
「よし、飛ばして!!」
岩砕剣を手にしたナイはミイナに向けて駆け出し、彼女は如意斧を一回転させ、加速を加えた状態でナイに向けて放つ。そしてナイは旋斧の刃を足場にしてミイナの怪力でゴーレムキングの元まで吹っ飛ぶ。
空中に跳躍したナイはゴーレムキングの胸元に目掛けて岩砕剣を構え、この際に地属性の魔力を送り込む。足場がない空中では岩砕剣に重量を加えて攻撃するしかなく、ナイは声を張り上げる。
「うおおおおっ!!」
『……オァアアアアッ!!』
しかし、あと少しでナイがゴーレムキングの胸元の宝石に攻撃が届く寸前でゴーレムキングは口内から赤色の光を放ち、それに気づいたナイは反射的に危険を察して左腕の反魔の盾を構えた。
――次の瞬間、ゴーレムキングの口元から熱線が放たれ、ナイは反魔の盾で防ぐ事に成功したが吹き飛ばされてしまう。この際に岩砕剣も手放してしまい、地面に突き刺さる。
反魔の盾によってナイはゴーレムキングの「火炎放射」を防ぐ事に成功したが、衝撃までは防ぐ事は出来ず、そのまま火竜の死骸が倒れている場所まで叩きつけられる。
「がはぁっ!?」
「ナ、ナイ君!?」
「そんな……!!」
「くそっ……ここまでかっ!!」
「ぐぅっ……!!」
ナイが吹き飛ばされた光景を見て他の者達は絶望の表情を浮かべ、一方でゴーレムキングは火炎放射を辞めると、今度は凍り付いた自分の肉体を動かそうとする。
『ゴォオオオッ……!!』
凍り付いた両腕を無理やりに動かし、徐々にだが動き始めた。その様子を見て他の者達は何も出来ず、ナイが最後の希望だった。彼以外の者達はもう戦意を失いかけており、あのテンでさえも膝を着く。
しかし、吹き飛ばされたナイ本人はまだ諦めておらず、彼は自分が火竜の死骸の傍に倒れている事に気付くと、火竜の体内に食い込んでいた最後の武器に気付く。
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