第390話 火竜VS討伐隊

「てりゃあっ!!」

「くぅっ……このぉっ!!」

「シャアッ!?」



今正にナイを踏みつぶそうとした火竜の元にミイナに吹き飛ばされたリーナは接近すると、彼女は蒼月を振りかざす。この際にリーナは魔法剣を発動させ、蒼月の刃に氷を作り出すと、先端を氷の刃へと変化させて火竜に放つ。



「せいやぁあああっ!!」

「ギャアアアッ!?」



偶然にも先ほどビャクが噛みついた箇所にリーナの放った氷の刃が的中し、鱗が剥がれて血が滲む。思いもよらぬ攻撃を受けた火竜は悲鳴を上げ、その隙にナイの元にミイナは向かう。



「ナイ、生きてる?」

「ミイナ……どうしてここに?」

「一人で戦おうなんて無茶し過ぎ……私達も一緒に戦える」



ミイナはナイを担ぐと火竜から離れ、その間にリーナの方は火竜の背中に飛び乗ると、槍を振り回しながら大型ゴーレムにもがれた翼の付け根の部分に氷の刃を突き刺す。



「はああっ!!」

「ギャウッ!?」



先ほどの旋斧のように傷ついた箇所に攻撃を受ければ流石の火竜も痛みを覚え、必死に身体を震わせてリーナを背中から落とそうとする。だが、彼女は蒼月を突き刺すと、能力を発動させて体内への攻撃を仕掛ける。


蒼月はの性質を併せ持ち、この二つの魔力を同時に発動させる事で凍結化や氷を生み出す事が出来る。そして蒼月を傷口に突き刺した事でリーナは内部から凍らせようとした。



「凍れぇえええっ!!」

「シャアアッ!?」



体内が急速に冷える感覚に火竜は危機感を覚え、この時に火竜は無意識に胸元に火属性の魔力を集め、徐々にそれ全体に流し込んで発熱させる。



「アガァアアアッ!!」

「くっ……熱っ!?」



体内から凍らせるつもりが、火竜の肉体が発熱した事でリーナは背中で立っていられず、慌てて蒼月を引き抜いて火竜の背中から飛び降りる。


火竜はリーナを引き剥がすと、彼女に対して血走った目を向け、片目に至っては未だにナイのミスリルの刃が突き刺さっているので血が流れっぱなしだった。その火竜の姿を見てリーナは怯えるが、すぐにナイの事を思い出す。



(こ、怖い……けど、ナイ君はこんな相手に一人で戦ってたんだ!!なら僕だって……負けてられない!!)



ナイはこんな相手に一人で挑んでいた事を思い出したリーナは持ち前の負けん気で心を持ち直し、蒼月を構えると地面に突き刺す。



「喰らえっ!!」

「アギャッ!?」



蒼月を突き刺した箇所が凍り付いた瞬間、地面から氷柱が出現して火竜の胸元に的中した。大抵の魔物ならばこの一撃で胸元を貫かれただろうが、火竜の場合は怯ませるのが精いっぱいだった。


しかし、火竜が怯んだ隙に馬の足音が鳴り響き、遂に他の討伐隊の面子も集まってきた。先頭を走るのはテンであり、彼女は退魔刀を握りしめながら怒鳴り散らす。



「こっちだ、この肥満トカゲ!!」

「シャアッ……!?」



馬から飛び降りたテンは火竜に向かって退魔刀を振りかざし、全力の一撃を右足に叩き込む。万全の状態ならば火竜も通用しなかっただろうが、ここまでの戦闘で火竜も相当な損傷を受けており、体勢を崩す。



「今だ!!魔術兵、奴に撃ち込め!!」

「躊躇するな!!全ての魔力を注いで攻撃を行えっ!!」

『はっ!!』



テンの攻撃によって火竜は体勢を崩すと、駆けつけた魔術兵が火竜に目掛けて砲撃魔法を発動させ、マジクも魔法に集中するために杖を構える。



「敵を切り裂け、スラッシュ!!」

「敵を刻め、カッター!!」

「――サンダーボルト!!」

「ギャアアアアッ!?」



無数の風の刃と上空に誕生した黒雲から降り注いだ雷によって火竜は悲鳴を上げ、地面に倒れ込む。既に損傷を負った状態で更に砲撃魔法の連続攻撃により、火竜は避ける事も出来なかった。


翼はもがれ、尻尾は切られ、片目も失った。そんな状態で更に魔法を受けた火竜は遂に倒れ込み、身体を痙攣させる。その様子を見たバッシュは倒したかと思ったが、ここで油断せずに攻撃を続けさせた。



「魔力が残っている限り攻撃を続けろ!!」

「王子、御下がりください!!ここは我が広域魔法で……!!」



マジクは杖を構えると、彼は全身から汗を流しながらも魔力を集中させる。彼もマホと同様に広域魔法を扱えるが、マホの場合は竜巻を生み出すのに対して彼の広域魔法は黒雲から雷撃を生み続ける危険な魔法だった。




「――サンダーレイン!!」

「ッ――――!?」




黒雲から無数の雷撃が降り注ぎ、火竜の肉体に的中する。何発、何十発もの雷が火竜に降り注ぎ、やがて黒雲が雷を降り注ぐのを辞めた時は全身が黒焦げと化した火竜だけが残っていた――

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