閑話 〈火竜〉

――この世界において人類に最も被害を与え、恐れられている存在は「火竜」と呼ばれる竜種である。だが、竜種の殆どは火竜以外も圧倒的な力を持ち合わせ、災害の化身とさえ恐れられていた。


火竜以外にも有名な魔物は地竜であり、この地竜は獣人国と呼ばれる国の領地に存在する。他にも海には海竜と呼ばれる竜種が存在し、伝説上では雷雲を操る雷竜と呼ばれる魔物も存在するという。


この世界の生態系においても竜種は頂点に位置づけされ、いくつもの国が滅ぼされた。しかも別々の竜種同士が邂逅した場合、互いに殺し合うまで戦いを辞めない。


かつて火竜と地竜が遭遇した際、地形が変動する程の激しい戦闘が繰り広げられ、お互いに同士討ちになった。その時の被害はあまりにも酷く、山が崩れて川は氾濫し、焼け野原と化したと言われている。


魔物の中でも最強の力を誇る存在、だからこそ人類は竜種には極力関わらない様にしてきた。しかし、長い歴史の中には圧倒的な力を誇る竜種に立ち向かった者もいた。





歴史上で初めて竜種の討伐を成し遂げたのは「レノ」と呼ばれる剣士だった。彼は1本の魔剣だけで火竜に挑み、勝利を果たしたという。その魔剣は後々の時代に竜種を打ち倒す偉業を成し遂げた事から人類に希望の光を与えた事から、いつの間にか聖剣と呼び称されるようになる。


聖剣の正式な名前は「カラドボルグ」と呼ばれ、嘘か真か不明だが雷竜の死骸から回収された牙から作り出された魔剣だと伝えられている。そもそも雷竜自体が目撃情報も少なく、本当に実在するのか疑われていたが、レノ本人は偶然にも雷竜の死骸を発見し、牙を回収して父親の鍛冶師に魔剣を作って貰ったという。


竜種の素材から作り出された魔剣や魔道具は強力な能力を誇り、レノが打ち倒した火竜から作り出された魔剣の中には後々にフレア公爵家の家宝となる「真紅」も製作されていた。




歴史上で名前を刻んだ有名な魔剣の殆どは竜種の素材が使用されており、これらの武器を完全に扱えた時は竜種と同等の力を得られると伝わっていた。しかし、歴史上でレノ以外に竜種の討伐を果たした人間は誰もいない――

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