第371話 レッドゴーレムの大群
「凄い……あれが、魔法槍なの?」
「そういえばナイさんは見るのは初めてですか?」
「魔剣と同じように魔法の力を宿す事が出来る武器……でも、ドリス副団長のは魔槍の中でも特別な部類。あの魔槍を扱えるのはフレア公爵家の人間だけ」
ドリスの所有する「真紅」は魔槍の中でも特殊な代物であり、フレア公爵家の人間以外は使いこなせないと言われている。真紅は送り込んだ火属性の魔力を噴射させる事で攻撃の威力を上昇させるが、使い方を間違えると使用者にも危険を及ぼす。
まずは火属性の魔力を噴射するという事は使用者の魔力を消耗させ、しかも勢いが強すぎるとランスを支えきれずに手放してしまう恐れがある。ランスが吹き飛べば戦い所ではなく、自滅を招く恐れがある。
彼女の真紅を扱うにはランスを手放さないための強い握力、魔力を流し込み続けながら戦う集中力、何よりも高い火属性の適正を持っていないと駄目である。この3つの条件を揃えない限りは真紅は使いこなせず、そして王国内でも現在は真紅を扱えるのはドリスだけだと言われていた。
「相変わらずの威力だな、ドリス……また腕を上げたな」
「あら、この程度の事で褒められても何も出ませんわよ王子?」
ドリスの活躍ぶりにバッシュは褒め称えると、その言葉に対してドリスは言葉とは裏腹に誇らしげな表情を浮かべる。だが、レッドゴーレムを倒したと言ってもそれはあくまで動き出したレッドゴーレムを1体倒したに過ぎず、この場に存在する火山弾は全てレッドゴーレムだと思われた。
「グルルルッ……!!」
「ビャク?どうしたの?」
「……油断するな、まだ終わってはおらんぞ!!」
ここでビャクが唸り声をあげ、今まで静観していた魔導士のマジクも皆に注意を促す。その言葉に全員が驚いて周囲に存在する火山弾に視線を向けると、何もしていないのに徐々に表面に亀裂が走り、内部からレッドゴーレムが出現した。
「ゴオッ……!!」
「ゴアッ!!」
「ゴオオオオッ!!」
「なっ!?こ、こいつら……急に動き出したぞ!?」
「いったいどうして……」
「まさか……熱に反応しているのか!?」
先ほどハマーンが起こしたレッドゴーレムは外部からの衝撃を受けて目を覚ましたが、どうやら衝撃以外にも高熱を感知するとレッドゴーレムは目を覚ますらしく、次々と動き出す。
火山弾の数は合計で20個近くは存在し、先ほどの戦闘によってレッドゴーレムの残骸が砕け散った時、破片が広がって熱を発する。その影響を受けてレッドゴーレム達は次々と復活を果たす。
『ゴオオオオッ……!!』
「いかん……戦闘態勢に入れ!!1匹も見逃すな、ここで始末するぞ!!」
「全く……起きたのはお前のせいだぞ、ドリス!!」
「や、やるしかありませんわね……」
ドリスの攻撃が切っ掛けでレッドゴーレムの大群は動き出し、流石に今度は全員で対処するしかなかった。ナイ達も武器を取り出し、マジクも杖を構えるがバッシュが制止する。
「マジク魔導士は下がれ!!ここで貴方の魔力を無駄に消耗させるわけにはいかない!!」
「しかし……」
「これは命令だ!!テン、マジク魔導士を頼んだぞ!!」
「仕方ないね……あんたら、頼んだよ!!」
マジクに無駄な魔力の消費を控えさせるためにバッシュはテンに命令を下し、今回の戦闘では二人は頼れない。バッシュも防魔の盾を取り出し、更にナイとの対戦でも使用しなかった魔槍を取り出す。
『ゴオオッ!!』
「行くぞ!!レッドゴーレムを一掃しろ!!」
『うおおおおっ!!』
レッドゴーレムの大群に対してバッシュの命令を受けた王国騎士と魔術兵、そして黄金級冒険者達は動き出す。ナイも旋斧を構え、ここで水属性の魔法剣を発動させる。
(アルトの言う通りならレッドゴーレムの弱点は水属性の魔法剣のはず……試す好機だ!!)
魔法腕輪に嵌め込まれた水属性の魔石を操作し、旋斧に水属性の魔力を送り込んだナイは駆け出す。旋斧の刃から水属性の魔力が宿った事で冷気を発し、それをレッドゴーレムに叩き込む。
「喰らえっ!!」
「ゴガァッ!?」
一際大きいレッドゴーレムに対してナイは旋斧を叩き込んだ瞬間、攻撃された箇所が一瞬にして冷えたのか色が変色し、やがて固まっていく。水属性の魔力がレッドゴーレムの肉体に宿る火属性の魔力を打ち消したらしく、攻撃された箇所を中心にレッドゴーレムの肉体が固まり始めた。
レッドゴーレムの構成する肉体は元々は火山の溶岩であり、溶岩が急速に冷え固まるかのようにレッドゴーレムは動けなくなり、そこにナイは旋斧を叩き込む。
「どりゃあっ!!」
「ゴガァッ……!?」
固まった箇所に旋斧が叩き込まれるとレッドゴーレムは呆気なく砕け散り、この際に胸元に隠れていた経験石も破壊され、砕け散る。それを確認したナイはアルトの言う通りにレッドゴーレムの弱点が水属性の魔法攻撃だと確信した。
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