閑話 〈冒険者ギルドの方では……〉
――マホ魔導士の弟子にして獣人族の剣士であるガロは冒険者になるため、試験を申し込んでいた。試験の内容は筆記試験と実技試験に分かれており、このうちの筆記試験は魔物に関する知識、盗賊等の悪人と遭遇した時に自分ならばどのように対処するべきか記されていた。
筆記試験に関してはガロはマホの元で共に旅をしていた時に大抵の魔物に関する知識は持ち合わせていた。だが、悪人の対処法に関しては容赦なく切り殺すという記してしまい、試験官からは渋い表情を浮かべられる。
だが、冒険者になるための試験で重要なのは実技試験の方であり、こちらの方はガロは圧倒的な実力を示した。彼は冒険者ギルド側が用意した魔物を倒し、更に他の受験者を打ち倒した事で最高成績を残す。そして彼は最後に面会を行う。
「俺がギルドマスターのギガンだ。まあ、楽にしてくれ」
「……お、おう」
ガロはギルドマスターが待機しているギルド長室に案内され、ギルドマスターと直々に面会を行う。王都の冒険者ギルドを管理するのは巨人族の男性であり、若かりし頃は黄金級冒険者に上り詰めた実力者でもある。
(このおっさん、相当に強いな……ゴンザレスが小さく見えるほどだ)
自分と同じ弟子であるゴンザレスと比べてもギガンは一回り程大きく、元々は優秀な武人でもあって威圧感が半端ではない。過去に大型の魔物と対峙した事があるガロでさえも気圧されてしまう。
ガロはギルドマスターと向かい合う形で座り込み、ギガンは彼の試験内容の報告書を見て彼と向き合う。しばらくはお互いに顔を見つめていたが、流石にガロは我慢できずに尋ねる。
「お、おい……何時まで黙ってるんだ。俺に話があるんじゃないのか?」
「ああ、そうだったな……試験の内容を見る限り、筆記の方は少々問題はあるが実試験の方は中々の好成績のようだな」
「中々、だと?おい、待てよ……それはどういう意味だ?俺は他の奴等を全員ぶっ飛ばしたし、あんたらが用意した魔物だって1匹残らず始末したんだぞ?」
ギガンの言葉にガロは黙っていられず、確かに実技試験においてはガロは他の受験者の中でも抜きんでた実力を示した。それなのに中々という表現をしたギルドマスターに食って掛かるが、そんなガロの態度にギガンは笑みを浮かべる。
「ふっ……自分の力に自信があるようだが、残念ながら歴代の合格者と比べればお前よりも上の人間は何十人もいる」
「な、何だと!?」
「うちのギルドで試験を受けた人間の中で最も早く実技試験を終わらせたのは12才の少女だ。最も数年前の話だがな」
「なっ!?」
数年前に自分よりも早く実技試験を突破した少女がいる事にガロは驚愕し、自分がまさか女に――しかも12才の少女に負けるなど彼が認められるはずがない。
「ふざけるな!!いったい誰だ、そいつは!?」
「現在は黄金級冒険者に昇格している。現在の年齢は16才……わずか4年で黄金級冒険者にまで昇格を果たした」
「よ、4年だと……!?」
冒険者の事にはあまりくわしくはないガロだが、黄金級冒険者になれるまではどれほどの功績を積み上げなければならないのかは調べていた。
普通の冒険者が一番下の鉄級から銅級に昇格するまで才能がある者でも早くても一か月はかかると言われている。次の銀級の冒険者に昇格するためには1年はかかると言われ、その次の金級に至っては数年間は冒険者活動を費やしてようやく昇格できると言われている。
そして冒険者の最高階級である黄金級冒険者に至っては10年以上の月日はかかると言われ、ギルドマスターであるギガンも黄金級冒険者に昇格したのは20代後半である。彼は15才の時に冒険者になったが、黄金級冒険者になるまでに十数年の時を費やした。
「そ、そんな馬鹿な話があるか!!そいつはどうやって黄金級冒険者に昇格したんだ?」
「簡単な話だ。他の黄金級冒険者に認められ、推薦されたからだ。年齢も若く、未熟な点もあるが俺は彼女を黄金級冒険者に認めた。彼女の武の才能に恵まれ、そして人に好かれる性格だからこそここまで早く上り詰める事が出来た」
「な、なんだと……」
「俺の見立てではお前はどちらも彼女には及ばない……特に性格の方が問題だな。まあ、その辺はこれから指導を受けて直してもらうとするが……」
「ちぃっ……」
ガロはギガンの言葉に悔し気な表情を浮かべ、そんな彼を見てギガンはガロを放置すると問題を起こすと判断し、しっかりと見張っておかなければならないと判断した。
「まずは合格おめでとうと言っておこう……これからお前は冒険者だ」
「……ふんっ」
ギガンはガロに対して冒険者のバッジを渡すと、ガロはしばらく見つめていたが、鼻を鳴らしながらそれを受け取った――
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