第325話 急報
「まあ、それはともかく……この岩砕剣は僕が管理しておくよ。兄上と父上に報告しておかないと……」
「そうだね、なら……」
「王子様!!アルト王子様!!」
ナイは岩砕剣をアルトに渡そうとした時、ここで訓練場に焦った様子の兵士が駆けつけてきた。唐突に訪れた兵士にナイ達は驚愕するが、アルトは態度を切り替えて兵士に尋ねる。
「どうした?何かあったのか?」
「お、王子様……すぐに玉座の間へ!!陛下がお呼びです!!」
「玉座の間?何があったんだ?」
「先ほど、グマグ火山に調査に出向いていたマホ魔導士が帰還されました!!すでに大将軍とマジク魔導士も到着されております!!」
「マホ魔導士が……!?」
王城にマホが戻ってきた事を知ったナイ達は驚くが、アルトは兵士の反応から察するにマホが何らかの重要な情報を持ち込んできたと判断し、ナイ達を残して玉座の間へと向かう。
「皆はここに残っていてくれ!!僕は玉座の間へ向かう!!」
「アルト王子、あたしも行くよ!!」
テンも只事ではないと判断して彼女もアルトに同行し、ナイ達を残して走り去る。いったい何が起きたのかは分からないが、ナイは嫌な予感がした。こんな時に彼の予感は今まで外れた事はなかった――
――アルトとテンが玉座の間に辿り着くと、そこには既にこの国の重要人物が揃っていた。既に玉座の間にはアルトの兄であるバッシュ王子、他にも黒狼騎士団の副団長のドリス、銀狼騎士団の副団長のリンも揃っていた。
そして玉座にはこの国の王であり、アルトとバッシュの父親でもある国王が座っていた。国王は黒髪に黒髭を生やした男性であり、息子たちと比べてもかなり大きく、実年齢以上に外見は若々しい。昔は騎士団を率いていた事もあって筋骨隆々の身体をしており、王家の紋章が刻まれた王冠を被っていた。
「アルト、遅いぞ。お前で最後だ……テン、お前も来ていたのか」
「はっ……申し訳ありません」
「陛下、お久しぶりです」
流石のアルトもテンも国王を前にすると普段の態度で接する事は出来ず、跪く。国王は全員が集まったことを確認すると、隣に立っている老人に話しかける。
「シン、まずは全員にお前の方から状況を説明してくれ」
「はっ……分かりました」
シンと呼ばれた男性はこの国の宰相であり、彼が国王に代わってこの場に集まった全員に状況の説明を行う。この際にアルトとテンはマホの姿が見えない事に気付き、彼女が戻って来たと聞いていたがこの場にいない事に不思議に思う。
「この場の何人かは既に事情を察していると思われるが、今一度最初から状況確認を行う。まず、先ほどマホ魔導士がここへ戻られた事は知っているな?」
「ええ、先ほど兵士から報告を受けましたが……」
「マホ魔導士はどこにおられるんですの?」
「先ほどから姿は見えないが……」
リンとドリスもマホが戻ってきた事は知っているが、玉座の間に存在しない事に気付き、不思議に思ってシンに尋ねると彼は神妙な表情を浮かべて答えた。
「マホ魔導士は現在治療を受けておられる。ここへ戻る際、相当な魔力を消耗してお戻りになられた。今は意識を失って眠っているとイシから報告が届いている」
「マホ魔導士が……!?」
「いったいどうして!?何があったのですか!?」
「静まれ」
マホが倒れて現在は治療を受けているという言葉にドリスもリンも戸惑い、理由を問い質そうとするがそれを制したのはバッシュだった。
バッシュは二人を落ち着かせると宰相と向き直り、何故マホが倒れたのかを尋ねる前に彼女が王城へ戻って来た理由を尋ねる。
「マホ魔導士は何を知らせにここへ戻って来たかを先に教えてくれ」
「はっ……ひと月ほど前、マホ魔導士はグマグ火山の調査のために弟子を連れて出向きました。そして本日、飛行魔法を使用してこの王都へ戻られました」
「飛行魔法!?それは風属性の上級魔法の事かい?」
「その通りだ。マホ魔導士はグマグ火山から引き返す際、想定外の事態に陥り、飛行魔法を使用して弟子と共に王都へ戻ってこられた。だが、報告を行う前に魔力を使い果たし、倒れられた。その代わりに同行していた弟子が調査報告をしてくれた」
グマグ火山へ調査に出向いたマホは王都へ帰還する際、彼女は飛行魔法と呼ばれる風属性の上級魔法を使用した影響で彼女は魔力を使い果たした。しかし、彼女と同行していた弟子のエルマが代わりにグマグ火山の調査報告を行う。
「グマグ火山にて大型の魔物の存在が確認された。早急に対応せねばとんでもない事態に陥るかもしれん」
「大型の魔物……!?」
「グマグ火山……まさか、火竜が!?」
火山に生息するような魔物は限られており、しかも大型となると火竜が復活したのかとアルト達は驚愕の表情を浮かべる。だが、宰相は首を振ってマホが報告した魔物の名前を告げた。
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