閑話 〈グマグ火山の脅威の正体は……〉

――グマグ火山にて調査に出向いたマホとエルマは謎の足跡を発見した。最初に足跡を見つけた時は火竜の物かと思われたが、足跡の大きさと形状から火竜とは異なる生物だと判明した。


足跡を発見したマホとエルマは早急に追跡を行い、山の頂上へ向かって足跡が続いている事に気付く。二人が火山の中腹まで移動を行うと、おかしなことに足跡が途切れてしまう。



「老師、足跡が見当たりません!!これはどういう事でしょうか?」

「待て……手がかりを探すのだ。きっと、この辺りに何かあるはず」



焦るエルマに対してマホは冷静に周囲を見渡すと、ここで地面が盛り上がったような痕跡がある事に気付く。まるで巨大なモグラが何かが地面の中に潜り込んだような大きな穴が残っており、それを確認したマホは嫌な予感がした。



「この穴は……」

「まさか、足跡の主は地中に……!?」

「いや、これは地中というよりも山の中に潜り込んでいるような……」



足跡を辿って発見した穴はかなり深く、しかも下の方向に潜っているというよりは横穴を掘り起こして山の中心部に潜り込もうとしている様子だった。しかし、普通の生物ならばマグマが煮えたぎる火山の中心部に潜り込もうとするはずがない。


マホは嫌な予感をしたがこのまま見過ごすわけにもいかず、彼女は穴の中に杖を向けると風属性の魔法を使用して調査を行う。魔導士であるマホは攻撃魔法以外にもあらゆる場面で役立つ魔法を覚えていた。



「儂の風魔法で探知を行う。エルマ、お主は周囲の警戒を怠るな」

「は、はい!!」



エルマはマホの言葉を聞いて頷き、彼女は弓矢を構えて周囲を警戒する。自分の背中は弟子に任せてマホは意識を集中させ、穴の中に杖を構えて風属性の魔法を放つ。



風圧探知ソナー



魔法を発動させた瞬間にマホの身体に風の魔力が渦巻、横穴の中に突風を想像させる風圧が送り込まれる。この時にマホは聴覚を研ぎ澄まし、横穴の内部の音を風の力で聞き耳を立てる。


風属性の魔法で横穴に風の魔力を送り込み、音を反響させて耳元に送り込む。森人族エルフである彼女は人間よりも聴覚に優れており、更に長年の特殊な訓練によって風の魔力を利用して探知機のように離れた場所でも正確な情報を掴める。この魔法は風属性の魔法を極めたマホにしか扱えず、彼女は横穴の奥に潜むはずの生物の正体を探った。



(何が待ち構えておる……これは、まさか!?)



遂にマホは横穴の最深部まで探知に成功すると、彼女は土砂を掘り進む巨大なの生物を確認した。正確に言えば人の形をした巨大な物体が土砂を掘り起こし、奥に潜り込もうとしていた。



(何じゃ、これは……!?)



明らかに火竜とは異なる姿形をした謎の物体にマホは目を見開き、この時に横穴の奥に潜んでいた存在は彼女が送り込んだ風の魔力を感じ取ったのか、おぞましい咆哮を放つ。




――オァアアアアアッ!!




地の底から響くような不気味な声が放たれ、横穴の前に立っていたマホとエルマはその声を聞いただけで鼓膜が敗れそうになり、慌ててその場を離れた。得体の知れない存在が横穴の奥にいる事は確かだが、これ以上の捜索は危険だった。



「エルマ、山を下りて態勢を立て直すぞ!!あれは儂等の手には負えぬ!!」

「は、はい!!」



マホはエルマを連れて即座に撤退を決断し、この場を離れようとした。幸いというべきか横穴に潜んでいた得体の知れぬ怪物は出てくる様子はなく、マホとエルマは一先ずは山を下りる事に成功した――

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