閑話 〈旋斧の秘密〉
――とある日、イチノの街に暮らすイーシャンはドルトンに呼び出された。彼が呼び出された理由はドルトンが倉庫を整理していた際、懐かしい物を発見したと聞いて彼は呼び出された。
「ほう、これは……昔の絵か?」
「ああ、儂がまだ冒険者だった頃、仲間達と共に描いて貰った」
ドルトンが呼び出した理由は数十年前、まだ彼が冒険者を務めていた頃に画家に頼んで描いて貰った絵を発見したからだった。当時の冒険者仲間とドルトンが共に移っており、若かりし頃の彼の姿が確認できる。
この絵にはドルトンと仲間達の他にもう一人だけイーシャンの知っている人物が描かれており、この時代は旋斧を武器として扱っていた「アル」も一緒に描かれていた。
「これを見たらナイの奴も喜ぶだろうな。あいつの驚く顔が楽しみだ」
「うむ、今度戻ってきたらこれをナイにも見せようと思ったんだがな……だが、これを見て気になる事はないか?」
「気になる事……?」
「アルが持っているこれの事じゃ」
絵に描かれている若かりし頃のアルは旋斧を地面に突き刺した状態で抱えており、それを見たイーシャンは訝し気な表情を浮かべる。ナイが所持していた旋斧と全く同じ形をしており、特に異変は見当たらない。
「別に何もおかしい所はないように見えるが……何か気になるのか?」
「うむ、やはり分からぬか……儂の気のせいならばいいのだが」
「おい、どういう意味だ?この剣の何がおかしいんだ?」
イーシャンの反応をみてドルトンは難しい表情を浮かべ、彼が何を気になるのかイーシャンは尋ねると、ドルトンは神妙な表情で答えた。
「大きさ、がな……心なしか小さく感じぬか?」
「は?大きさ?武器が大きくなったのか?」
「うむ……この絵を確認する限り、ナイが持って来た時よりも大きさが一回りほど違う気がするのだ」
「そんな馬鹿な……」
ドルトンによるとナイが所持していた旋斧と数十年前にアルが扱っていた時と比べ、旋斧が一回り程大きくなっているようにドルトンは感じられた。
最初はイーシャンも彼の見間違いだと思ったが、商人であるドルトンの目利きは確かであり、普通の人間ならば気づく事も出来なかった違和感を彼は気づいた。確かに当時のアルの事を知っているイーシャンは若い頃のアルの姿と旋斧の大きさを見て、ナイが持っていた時と旋斧の大きさがかなり違う事に気付く。
「いや、まさか……剣がでかくなったのか?そんな馬鹿な……あ、分かった!!きっとアルの奴が打ち直したんだろう?」
「お主はアルが旋斧を打ち直したという話は聞いておるか?」
「いや、それはないが……」
「儂もアルの奴からそのような話は聞いておらん。そもそもあの武器はそう簡単に打ち直せる代物ではない。この街一番の鍛冶師でもどうにもならなかったからな……別の武器をアルが作り直したとも思ったが、ナイは確かにこの武器がアルの家系に伝わる旋斧だと告げた」
「馬鹿な……何もしていないのに剣が大きくなったと言い出すつもりか?有り得ないだろう、そんな事……」
ドルトンの話を聞いてイーシャンは信じられない表情を浮かべ、その一方でドルトンの方も冷や汗を流す。
「もしかしたらあの魔剣は……儂等の想像以上に大変な代物かもしれんのう」
イーシャンはドルトンの言葉を聞いて呆然と絵を見つめ、ナイが持ちだした魔剣とはいったい何なのかと戸惑いを隠せない――
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