閑話 〈モモ、デート前日 ※ヒナ視点〉

「ねえねえ、ヒナちゃん!!明日の服、どれがいいと思う!?」

「……モモ、いい加減に寝させてよ。もう何時だと思ってるの?」

「え~!!そう言わずにもう少しだけお願い!!一緒に服を選んでよう!!」



白猫亭の従業員であるヒナは自分と同じく従業員であるモモに呼び出され、彼女の部屋にて大量の衣服を見せつけられる。モモは明日の午後の仕事は休み、この宿屋の唯一の宿泊客であるナイと出かける約束をしていた。


モモは明日に供えて色々と服を用意するが、どれを着込めばいいのか分からず、幼馴染にして実の姉妹のように仲のいいヒナに相談を行う。モモが初めて男の子と二人で出かけるという事もあって最初はヒナも協力的だったが、優柔不断な彼女は深夜を迎えても服を決められない。



「こっちのワンピースがいいかな?それとも女将さんが勧めてくれたビキニアーマーを……」

「ちょっと待ちなさい、なんでそんな物があるのよ。モモ、貴女はナイ君と出かけるのになんで鎧なんて着るのよ」

「え?テンさんに相談したら、男はこういう服に弱いって……」

「それは服じゃなくて鎧でしょうが!!テンさんも何てものを渡してるの!!」



テンから受け取ったというビキニアーマーをモモが取り出した時はヒナは頭を抱えるが、彼女が真剣に明日のナイとのデートのために悩んでいる姿を見て、本当にモモはナイの事に夢中だと思うと少し寂しい気もした。



(この子、本当にナイ君の事が好きなのね……ちょっと寂しいけど、ここはお姉さんとしてちゃんと応援してあげましょう)



この調子だとテンの適当な言葉で本気でビキニアーマーを着込んで明日のデートに乗り込みそうなモモを見かね、ヒナはちゃんと助言を与える事にした。



「焦らなくても大丈夫よ。あんたは可愛いんだから余程変な服でもない限りは似合うわよ」

「ううっ……でも、男の子と二人きりで遊びに行くの何て初めてだから何をすればいいのか分からないよ」

「だからって焦っても仕方ないでしょ。そうね、ならこうしましょう。ナイ君を男の子だと思わず、女の子だと思い込みなさい」

「ええっ!?」

「ほら、ナイ君の女装姿を思い出しなさい。明日は男の子とデートするんじゃなくて、女友達と遊びに行くと考えたら少しは気分が落ち着くでしょう」

「う、う~んっ……うん、落ち着いてきた気がする」



ヒナの言葉にモモは悩むが、ナイが女装した姿を思い出し、女装したナイと自分が一緒に遊ぶ光景を想像する。すると、不思議と緊張感が解れ、まるで女友達と遊びに行くような気分になって落ち着く。


こんな適当な助言でもちゃんと聞き入れてくれるモモにヒナは苦笑いを浮かべるが、そんな彼女の肩に手を置く。



「もしも焦っている時や、どきどきした時はナイ君の事を男の子だと意識し過ぎない様にしなさい。いつも通り、それこそ私と遊んでいるんだと思い込めば落ち着くはずよ。そうすれば大きな失敗なんてしないわ」

「わ、分かった……ナイ君をヒナちゃんと思えばいいんだね?」

「そうそう、まずは焦らずじっくりと二人の距離を縮める事が大事よ。変に意識し過ぎて妙な行動をしちゃ駄目よ」

「うん……分かった!!私、頑張るよ!!」



ヒナの言葉にモモは頷き、そんな彼女にヒナは笑顔を浮かべた。

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