第215話 反撃開始!!
「失せろっ!!」
『ギャアアアッ!?』
「わあっ……ナ、ナイ君、凄~い!!」
モモに襲い掛かろうとした3体のガーゴイルをナイは蹴散らすと、それを見ていたモモは驚いた表情を浮かべる。その一方でナイの方も自分の身体に視線を向け、咄嗟の事とは言え、3体のガーゴイルを吹き飛ばした事に驚く。
(何だ、今の……剛力も使ってないのに)
剛力も使用せずにナイは3体のガーゴイルを同時に吹き飛ばした事に戸惑い、心なしか身体が異様に軽い。恐らくはモモの魔力の影響で肉体の身体機能が強化されており、強化薬を飲んだ時と似た感覚を覚える。
この状態ならば普段以上に戦えると思ったナイは両手の旋斧と退魔刀に視線を向け、今ならばこの二つも武器も片腕で扱える気がした。ナイは3体のガーゴイルと向き直り、大きく踏み込む。
「はあああっ!!」
『ギャウッ!?』
『アガァッ!?』
『グゲェッ!?』
左右に挟み込むようにナイは両手の剣を振り払うと、3体のガーゴイルはお互いの身体を衝突させて倒れ込み、それを見たナイは旋斧を手放して両手で退魔刀に持ち換えると、身体を回転させながら刃を叩き込む。
「うおおおおっ!!」
『ギャアアアアッ!?』
円斧の要領でナイは退魔刀を振り払うと、同時に3体のガーゴイルの胴体を切り裂き、上半身と下半身を切り裂かれたガーゴイル達は倒れ込む。その様子を確認したナイは驚きを隠せず、今までにない程に力が漲っていた。
(凄い、これがモモの魔力か……今なら赤毛熊でも簡単に倒せそうだ)
現在のナイの肉体は絶好調どころではなく、自分の身体とは思えない程に力が溢れていた。だが、身体を切り裂かれたガーゴイル達はまだ死んではおらず、切り裂かれた上半身と下半身が悶えるように振るえていた。
『ギャウウッ……!?』
『アガァッ……!?』
『アアッ……!?』
「ま、まだ生きてるの!?」
「そうか……こいつらは核を破壊しないと倒せないんだっけ」
ナイは退魔刀を床に突き刺すと、旋斧を拾い上げる。粉々に破壊するのならば退魔刀よりも旋斧の方が向いており、倒れ込んでいる3体にナイは容赦なく旋斧を振り下ろす。
旋斧を叩きつけられたガーゴイル達の肉体は砕け散り、胸元に埋め込まれていた紫色の魔石も破壊される。するとガーゴイル達も完全に動かなくなり、それを確認したナイは今度こそガーゴイル亜種の元へ向かうためにモモに告げた。
「じゃあ、行ってくるよ」
「う、うん……頑張ってね、負けちゃ駄目だよ!!」
モモの言葉にナイは無言で頷き、旋斧と退魔刀を両手に抱えて駆け出す――
――時は少し前に遡り、ビャクとミイナとヒイロはガーゴイル亜種を相手に追い込まれていた。
『シャアアッ!!』
「ギャウンッ!?」
「くっ……!?」
「このっ……いい加減にくたばって下さい!!」
ガーゴイル亜種は棍棒代わりに利用している樹木をビャクの身体に叩きつけ、遂にビャクも倒れ込む。それを見たミイナとヒイロは動き出し、ヒイロはガーゴイル亜種が手にする樹木に向けて剣を放つ。
「はああっ!!」
『ッ……!?』
烈火を突き刺した瞬間に樹木全体に炎が走り、焼け崩れる。武器を失ったガーゴイル亜種は呆気に取られるが、すぐに気を取り直して樹木を放り投げると、腕を振り払ってヒイロを吹き飛ばす。
『シャアアッ!!』
「きゃああっ!?」
「ヒイロ!?よくも……もう、許さない!!」
ヒイロが殴り飛ばされた姿を見てミイナは目つきを鋭くさせ、彼女は如意斧の柄を伸ばすと、身体を回転させる。
今回は一回転には収まらず、何度も回転を加える事で加速させ、最大限まで遠心力を加えた一撃を放つ。結果から言えば彼女の放った如意斧の刃は見事にガーゴイル亜種の左足に叩き込まれた。
「大回転撃!!」
『アガァッ!?』
左足に強烈な衝撃を加えられたガーゴイル亜種は体勢を崩し、僅かにではあるが左足に亀裂が走る。この程度の傷ならば通常種のガーゴイルならばすぐに再生するはずだが、何故かガーゴイル亜種は左膝を抑えて立ち上がる事もままならない。
(まさか……再生能力が衰えている?)
ミイナはガーゴイル亜種が傷を負って立ち上がれない様子を見て疑問を抱き、ここで彼女はガーゴイル亜種の背後へと移動し、先ほどナイが吹き飛ばされる前に与えた傷の確認を行う。
背中には僅かにではあるがナイが与えた傷が残っており、徐々に再生はしているようだが、通常種のガーゴイルと比べても再生速度が非常に遅い。この事からミイナはガーゴイル亜種の弱点を見抜く。
(このガーゴイル……硬度は通常種よりも高いけど、再生能力は低い。もっと早く気付ければ……)
傷の再生が遅い事を知っていればミイナは傷口を集中的に攻撃し、ガーゴイル亜種を倒せる事が出来たのかもしれないと思う。しかし、先ほどの一撃でミイナも限界近くまで体力を使い、もう走る余力も残っていなかった。
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