第199話 覚悟しろ
「流石に数が多い……ここは私が足止めするから、皆は先に行って」
「えっ!?でも……」
「大丈夫、武器さえ手に入ればこんな奴等は敵じゃない。すぐに追いつくから先へ行って」
「……ここはミイナに任せましょう」
「ヒナちゃん!?」
ミイナの言葉にナイは驚愕するが、ヒナはすぐに賛同する。誰かがここで足止めしなければ次々と兵士が押し寄せるため、足止め役は必要だった。
「ミイナなら大丈夫よ!!それに私達がバーリを捕まえればお終いよ!!」
「その通り、ここは私に任せて……それとも私の事が信じられない?」
「……お願いします」
「ま、待って!!」
ナイとヒナはミイナを信じて先へ進もうとしたが、この時にモモはミイナの腕を掴み、彼女は驚いた様に振り返るとモモは目を閉じる。
「せめて体力だけでも分けてあげるね……」
「モモ……ありがとう」
「な、何をしてる!?おい、奴等を捕まえろ!!」
「うおおおっ!!」
モモの言葉を聞いてミイナは何かを悟ったように頷き、その様子を見ていた兵士達は二人を捕まえるために動き出す。
迫りくる兵士達に対してミイナはモモの腕を離させると、彼女の背中を押して先に進むように促す。モモはミイナを心配するが、すぐにナイ達の後を追う。そして残されたミイナは如意斧を振り払う。
「ここから先は……通さない!!」
「うわぁっ!?」
「こ、こいつ……ひいっ!?」
「ど、どうなってるんだ!?さっきよりも力が……ぎゃあっ!?」
ミイナは如意斧を振り回し、近付いてくる兵士達を蹴散らす。その様子をナイは走りながら伺うと、心なしか先ほどよりも動きに切れが戻っている様子だった。
モモが触れた瞬間にミイナの体力が回復したように思えるが、その一方でモモの方は疲れた表情を浮かべており、それを見たヒナが心配そうに声をかける。
「モモ、無茶をし過ぎよ!!あんた、今日は二回目でしょ!?」
「へ、平気だよ……少し休めば大丈夫だから」
「全く、仕方ないわね……ナイ君、急ぎましょう!!」
「え、あ、うん……」
ナイは二人のやり取りを見て疑問を抱くが、ミイナが時間を稼いでいる間に部屋を調べていく。見落としが内容にクローゼットや机の下なども確認し、バーリの姿を探す。
(何処だ……何処に隠れている?)
気配感知を発動させてナイもバーリの位置を探し出そうとするが、屋敷内に大量の兵士が駆け込んでいるせいで兵士達の気配が混じって探しにくく、人が多い場所ではナイの気配感知はあまり役立たない。
気配感知の技能を普段から使用し、もっと技術を向上させれば大勢の人間がいる場所でも特定の人物の気配を感知する事も出来たかもしれない。だが、今は泣き言を言っている場合ではなく、ナイは必死に気配感知の範囲を狭めて自分が調べようとする部屋の中の気配を感じとる。
(……あそこから気配を感じる!!)
遂にナイは3階の隅にある部屋から気配を感じとると、扉の前に立つ。扉に手を伸ばすと他の部屋と違ってここだけが鍵が掛けられており、それが逆に怪しい。
「見つけた!!多分、この部屋の中だ!!」
「その部屋ね!?よし、モモ!!最後の力を振り絞りなさい!!」
「わ、分かったよぅっ!!」
ヒナの指示を受けてモモは駆け出すと、彼女は勢いよく跳躍を行い、その際にスカートが捲れて彼女の猫さんパンツが丸見えになる。ナイはそれを見て色々な意味で頬を赤くするが、モモは勢いを付けた状態で飛び蹴りを放つ。
「てりゃあああっ!!」
「ぬおおっ!?な、何事じゃあっ!?」
モモの跳び蹴りによって扉は開け放たれ、中にはベッドの上に座り込むバーリの姿が存在した。バーリの傍には怯えた表情で立ち尽くす寝間着姿の女性使用人の姿が存在し、それを見たナイは彼女達に逃げる様に促す。
「早く逃げて!!今のうちに!!」
「えっ……」
「貴女達だってこんな豚野郎に汚されたくないんでしょ!?」
「豚野郎!?それは儂の事を言っておるのか!?」
使用人たちはナイ達の言葉に顔を見合わせ、彼女達は覚悟を決めた様に部屋の外へ走り出す。残されたバーリは慌てふためきながら壁際に避難するが、そんな彼に対してナイは近づき、退魔刀を構えた。
「バーリ!!お前の悪事もここまでだ!!」
「ひっ!?お、お前はさっきの……ど、どうしてここにいる!?」
「呆れた男ね……私達が脱走したのを知らなかったの?」
「そ、そういえばそんな話も聞いたような……ええい、それならばダンの奴は何をしておる!?ゴウはどうした!?」
「生憎、二人とも隠し倉庫でおねんねしてるわよ」
「な、なんだとっ!?」
バーリは傭兵の中で最も頼りにしていたダンとゴウが既にやられている事を知って驚き、顔色を青くさせる。その一方でナイは部屋の中にバーリ以外に誰もいない事を確認すると、出入口の前に立つモモに注意を行う。
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