第136話 俺は認めねえ!!

「ふざけんな……こんなガキに俺が劣るはずがねえっ!!おい、ナイとか言ったな!?俺と勝負しろ!!」

「えっ!?」

「ガロ、いきなり何を言い出すのですか!?」

「そうだぞ、ナイが困ってるだろう」



ガロの言葉にエルマとゴンザレスは彼を止めようと腕を伸ばすが、そんな二人を振り払うとガロは二人にも怒鳴りつける。



「ならお前等は納得しているのか!?こんなガキに俺達が劣っていると言われたんだぞ!?」

「ガロ、何を言っているんだ?」

「老師はナイが私達よりも魔力を持っていると話しただけで、別に私達が劣っているとは一言も……」

「うるせえっ!!綺麗ごとを抜かすな、こんなガキに魔力だけでも劣っている事自体が恥だぜ!!」

「うわっ!?」



会話の際中にガロはナイに服を掴み、無理やりに引き寄せる。その力はかなり強く、首元を掴まれたナイは苦し気な表情を浮かべると、ガロは彼に凄む。



「調子に乗るなよ……俺はお前なんか認めねえ。お前みたいなガキに俺が負けるはずがねえっ!!」

「ガロ、いい加減にせんか!!さもないと……」

「くっ……いい加減にしろ!!」

「うおっ!?」



ガロを止めようとマホが動く前にナイが我慢の限界を迎え、彼の腕を掴むと力強く握りしめる。その行為にガロは最初は何のつもりかと思ったが、信じられない握力でナイはガロの腕を掴み、彼は苦痛の表情を浮かべる。


剛力を発動せずともナイの身体能力は高く、自分の胸元を掴むガロの腕を全力で握りしめると、彼はたまらずにナイを手放して腕を引き寄せる。ガロは信じられない表情を浮かべながらも自分の両腕に出来たナイの指の形をした痣を見て、彼は歯を食いしばりながら怒りの表情を浮かべた。



「てめえっ……!!」

「っ……!!」

「止めんか、馬鹿者が!!」



ナイは自分を睨みつけてくるガロに対して身構えると、ガロはナイに詰め寄ろうとしてきた。しかし、それを見かねたマホは杖を地面に叩きつけると、それだけで風圧が発生してマホの周囲に立っていた者達は体勢を崩す。



「うわっ!?」

「うおっ!?」

「きゃっ!?」

「ぬあっ!?」

「全く……この馬鹿弟子め」



マホが杖を地面から離すと風圧は消え去り、地面に倒れ込んだナイ達は唖然とした表情でマホを見つめる。彼女は呆れた様子でガロの元へ近づき、説教をしようとした時、ここで裏庭のほうに思いもよらぬ人物の声が響く。



「ま、マホ老師!!ここにいたか!!」

「ん?お主は……」

「イーシャンさん?」



裏庭に駆けつけたのはイーシャンであり、彼はドルトンの治療に付きっきりだったはずだが、何故か焦った表情を浮かべてマホの元へ駆けつける。


尋常ではない様子のイーシャンの姿を見てナイはまさかドルトンの身に何かあったのかと思ったが、イーシャンが告げた言葉は予想を覆す内容だった。



「た、大変だ!!魔物が……凄い数の魔物が現れたんだ!!」

「えっ!?」

「何!?」

「そんな馬鹿な!!老師の結界が破られたのですか!?」

「有り得ない……!!」

「馬鹿なっ!?」



魔物が集まってきているという言葉に全員が驚き、この屋敷にはマホが施した魔除けの結界が貼られているはずだが、それが破られたのかと全員が思った。しかし、イーシャンは慌てて言葉を続ける。



「あ、いや……屋敷に魔物が入り込んだわけじゃないんだ。だけど、屋敷の正門の方にとんでもない数の魔物が集まってるんだ!!ともかく、こっちに来てくれ!!」

「老師!!」

「うむ……行ってみるか。ガロ、説教は後じゃ」

「ちっ……」

「どうして魔物が……」



イーシャンの話を聞いたナイ達は一先ずは彼と共に屋敷の正門へと移動し、魔物達の様子を伺う事にした――





――屋敷の正門前には怪我を負った状態ながらも松葉杖で立ち尽くすドルトンの姿が存在し、絶対安静の彼が外に出ている事にナイは驚くが、更に彼の前方の光景を見て驚愕する。



『グギィイイイッ……!!』

『ギギィイイイッ……!!』

『グルルルッ……!!』



屋敷の前では大量のホブゴブリンと、ファングに乗り込んだゴブリンの大群が存在し、どうやら屋敷が狙いではなく、別の場所に目掛けて移動している様子だった。


大量の魔物が進行する光景をドルトンは冷や汗を流しながら見つめ、魔物達が向かう方向に視線を向けると、彼は表情を青ざめる。



「ドルトンさん!!」

「ナイ!?」

「しっ……静かにしてください。結界があるから私達の存在は気づかれないと思いますが、あまりに大声を出すと勘付かれるかもしれません」



ナイがドルトンに声を掛けると、すぐにエルマが注意を行う。屋敷を守る結界はあくまでも魔物達から存在を勘付かれない様にするための物であり、もしも魔物が屋敷から聞こえる声に反応して中に入り込んで来たら防ぐ術はない。

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