第44話 戦いの準備

――戦う決意を固めたナイが最初に準備したのは薬と武器の類の準備だった。先の戦闘で薬の重要性を思い知られたナイは家にあるだけの物で準備を行う。


まずはドルトンから購入した回復薬であり、最初に購入した時は2本貰ったが、アルの治療のために1本は消費した。他にはナイが自作した薬草の粉末が入った小壺を用意しておく。回復薬程の効果はないが、ナイが「採取」の技能で集めた薬草を素材に作られているため、回復効果は高い。


最後にナイはドルトンから受け取った「強化薬パワーポーション」も持っていく。これを飲めば一時的にとはいえ、肉体が強化されて通常以上の力を引き出す事が出来る。魔物との戦闘で役立つ可能性もあり、念のために持っていく。


他に用意する物は武器の類であり、通常種のゴブリンならばアルが作り出した短剣で対処できる。家の中に保管されていた予備の短剣を2つほど身に付け、最後にナイはホブゴブリン対策を行う。


ホブゴブリンの肉体は非常に硬く、弱点である胸元を付かなければ確実には殺せない。前の戦闘でナイは短剣だけで勝利できたが、攻撃の際にナイは腕の骨が折れてしまうほどの重傷を負った。その事を踏まえて短剣で挑むのは無謀過ぎた。


敵はホブゴブリンだけではなく、配下のゴブリンも相手にしなくてはならない。そこでナイはゴブリン達に対抗するため、短剣以上の武器を用意する必要があった。



(……よし、これで準備は整った)



時刻は夜更けを迎え、普段ならば誰もが寝静まった時間帯の中、ナイは水晶の破片を手にした状態で倉庫に引きこもっていた。家の中ではアルとドルトンがまだいるはずだが、ナイは二人に黙って倉庫へと入り込む。



(お願いします、爺ちゃんの御先祖様……どうか僕に力を貸してください)



ナイは倉庫に収められている旋斧に視線を向け、彼は緊張した面持ちで水晶の破片を手にしてステータス画面を開く。



――――ナイ――――


種族:人間


状態:普通


年齢:10才


レベル:11


SP《スキルポイント》:20



―――技能一覧―――


・貧弱――日付が変更する事にレベルがリセットされる


・迎撃――敵対する相手が攻撃を仕掛けた際、迅速な攻撃動作で反攻に転じる


・観察眼――観察能力を高め、周囲の状況を詳しく把握できる


・採取――採取の際、良質な素材が多く手に入りやすくなる


・調合――調合の成功率が格段に上昇する




――――――――――



「よし……レベルがちゃんと上がってる」



画面を確認したナイは頷き、床に落ちた経験石の残骸と「壊裂」と呼ばれる道具を目にした。これまでに回収した経験石を破壊した事でナイはレベルが上昇し、遂にSPを習得するのに必要な分のレベルアップに成功した。


昨日の時点で溜めていたSPが「10」そして今日の内にレベルを上げて手に入れたSPが「10」これで新しく技能を2つ覚えられるはずだった。



「良かった、ちゃんと上がってる……でも、思っていた以上に経験石を使ったな」



これまでに魔物を倒した時に回収していた経験石は相当な数があったが、ナイがレベルを11までに上げるのにほど使い込んでしまった。最初の内は経験石を破壊するだけで簡単にレベルは上がったが、途中からレベルを上げるのに必要な経験値量が一気に上がり、思っていた以上に使用してしまった。



(レベルが5ぐらいまでは簡単に上がったけど、そこから先を上げるのにかなり苦労したん……でも、お陰で今まで一番力が湧いてくる感じがする)



現在のナイのレベルは11まで上昇した事により、彼は普段と比べても力が溢れかえる感覚に陥る。力を手にしたという高揚感と、それと同時に新しいSPを覚えられるという事にナイは勇気を震わせる。



「よし……覚えよう」



ステータス画面を切り替え、今度は未収得の技能一覧を表示させると、遂にナイは肉体を強化する技能を覚える事にした。



――習得可能技能一覧――



・腕力強化――腕力が強化される(SP消費量:10)


・脚力強化――脚力が強化される(SP消費量:10)


・跳躍――跳躍力が強化される(SP消費量:10)


・解体――死骸から素材を剥ぎ取る技術が向上する(SP消費量:10)


・気配感知――敵意を抱く生物の気配を感知できるようになる(SP消費量:10)


・索敵――潜伏している敵の位置を捉える事ができる(SP消費量:10)


・怪力――肉体の限界近くまで力を発揮する事ができる(SP消費量:10)


・自然回復――自然回復力が高め、病気や怪我が治りやすくなる(SP消費量:10)


・経験値増加――敵を倒す、あるいは経験石を破壊した時に入手する経験値の増加(SP消費量:10)



――――――――――――



画面を確認したナイは緊張した面持ちで自分が欲する技能を確認し、習得を行う。そして水晶の破片を通して身体の中に熱い何かが流れ込む感覚に襲われた。



「う、ぐっ……これで、覚えたのかな?」



技能を覚える際に襲い掛かる身体の感覚を経たナイは自分の掌を確認すると、試しに水晶の破片を切り替えてステータス画面を確認した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る