第38話 勝利の証
「そうか、これのお陰だったんだ。良かった、置いてこなくて」
ナイは水晶の破片を摘まみ取り、もしも服の中に持ち込んでなければ今頃は気絶して魔物の餌になっていたかもしれない。ナイは水晶の破片を持ってきていた事に安堵する一方、今の自分がどれほど成長したのかを確かめるために水晶の破片を翳す。
「今のレベルは……えっ!?」
水晶の破片を翳した瞬間、破片が光り輝くと地面に光の文章が刻まれ、その内容を確認したナイは驚愕の声を上げる。
――――ナイ――――
種族:人間
状態:普通
年齢:10才
レベル:8
SP《スキルポイント》:10――使用可能
―――技能一覧―――
・貧弱――日付が変更する事にレベルがリセットされる
・迎撃――敵対する相手が攻撃を仕掛けた際、迅速な攻撃動作で反攻に転じる
・観察眼――観察能力を高め、周囲の状況を詳しく把握できる
・採取――採取の際、良質な素材が多く手に入りやすくなる
・調合――調合の成功率が格段に上昇する
――――――――――
ステータス画面を確認したナイは驚きを隠せず、いつの間にかレベル「8」まで上昇していた。今日の目標にしていたレベルにまで到達した事にナイは驚きを隠せず、戸惑う。
(まさか、あの2体のゴブリンを倒しただけでこんなにレベルが上がるなんて……あ、待てよ。そういえば倒す時に経験石も壊したからこんなに上がったのかな……?)
ホブゴブリンを2体倒しただけではここまでのレベルは上昇しない。しかし、ホブゴブリンの内部に存在する経験石を破壊した事によってナイは通常以上の経験値を入手していた。
経験石は倒した魔物と同等の分の経験値を保有しており、合計でナイはホブゴブリン4体を倒したのと同等の経験値を得た事になる。そのお陰でレベルが急激に上昇し、新しい技能を習得できる程のSPを獲得できた。
「あいつら、やっぱり普通のゴブリンじゃなかったんだな……でも、あんなゴブリンなんて初めて見た」
ナイはホブゴブリンと遭遇したのは今日が初めてであり、外見を見ただけで普通のゴブリンではないと察した。出来る事ならばもう二度と戦いたくはない相手であり、また戦えば勝てる自信はない。
(今日の狩りはここまでだな……爺ちゃんには怒られるだろうけど、短剣は失くした事にしよう)
一応は短剣の方は最初に倒したホブゴブリンの死骸からは回収したが、解体用の短剣の方は取りに行く余裕はなく、ナイは置いていく事にした。今から戻るにしても危険過ぎであり、もう今頃は他の魔物の餌食になっているかもしれない。
回収した短剣も経験石を破壊する際に刃が欠けてしまい、武器としては心許ない。仕方なく、ナイは今日の狩りはここまでにして帰ろうとした時、不意に今のうちに新しい技能を覚えておくかと考える。
(そうだ、今のうちに技能を覚えておこうかな……何か役に立つのがあるかもしれないし)
ナイは画面を切り替えると、現時点で習得可能な技能の一覧が表示される。すると、前回表示した時よりも技能の数が追加されていた。
――習得可能技能一覧――
・腕力強化――腕力が強化される(SP消費量:10)
・脚力強化――脚力が強化される(SP消費量:10)
・跳躍――跳躍力が強化される(SP消費量:10)
・解体――死骸から素材を剥ぎ取る技術が向上する(SP消費量:10)
・気配感知――敵意を抱く生物の気配を感知できるようになる(SP消費量:10)
・索敵――潜伏している敵の位置を捉える事ができる(SP消費量:10)
・怪力――肉体の限界近くまで力を発揮する事ができる(SP消費量:10)
・自然回復――自然回復力が高め、病気や怪我が治りやすくなる(SP消費量:10)
・経験値増加――敵を倒す、あるいは経験石を破壊した時に入手する経験値の増加(SP消費量:10)
――――――――――――
どうやらホブゴブリンとの戦闘を経験した影響なのか「怪力」「自然回復」「経験値増加」の3つの技能が追加されていた。その内容を確認したナイはどれもこれもが戦闘に役立ちそうな内容だと気付き、やはり技能はナイが経験した事から追加されると判断した。
(……どうしよう、どの技能も欲しいけど1つしか覚えられない。とりあえず、覚えるのは後にして帰った方がいいかな)
今日の目的はあくまでも技能を覚えられるために必要なSPの確保であるため、無理に今すぐに覚える必要はない。自然回復に関しては現在も怪我をしているため、覚えておきたい所ではあるが、何とか我慢してナイは山から下りる事にした――
――同時刻、川の近くで死んでいたホブゴブリンの死骸の元には無数のゴブリンが集まり、死んでいるホブゴブリンに視線を向けた。やがてゴブリンの1匹がホブゴブリンの身体に突き刺さっている短剣に気付き、それを引き抜く。
「ギィッ……ギィアアアアアッ!!」
ホブゴブリンの身体から短剣を引き抜いたゴブリンは怒りとも悲しみとも捉えられる咆哮を放ち、その様子を他のゴブリン達は黙って見詰める事しか出来なかった――
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