第30話 習得「調合」「採取」そして……
「もしかして……色々な事を試せばもっと新しい技能も覚えられるようになるのかな?」
ほんの少しでも技術を身に付けようとするだけで習得技能一覧に新しい技能が追加されていた場合、習得に必要なSPを集める事が出来れば数多くの技能を身に付ける事が出来る。
通常、普通の人間が生まれ持った技能は1つだが、レベルを上げる事でSPを獲得し、新しい技能は覚えられる。だが、レベルが上昇すればその分に次にレベルを上げるために必要な経験値が増加されていく。そういう意味では普通の人間が覚えられる技能の数は限られていた。
しかし、ナイは生まれた時から「貧弱」の技能のお陰でレベルリセットを繰り返し、レベル1の状態へと戻る事で最低限の経験値で何度もレベルを上げる事が出来る。この特性のお陰でナイは子供ながらに「30」というSPを習得する事に成功した。
「凄く大変だと思うけど……これ、全部覚えられる。魔物を倒し続ければきっと全部の技能を覚えきれる」
ナイは水晶の光に照らされた文章を確認し、身体を震わせた。迎撃を覚えた時でさえも何度も命を救われ、更に新しい技能を身に付ければ今以上に自分は強くなれる。そう考えたナイだが今はどの技能を覚えるべきか慎重に考える。
「と、とりあえずどれから覚えようかな……出来るだけ、役に立ちそうなのを覚えないと」
現時点でナイが覚えられる技能の数は限られており、真っ先にナイが気になったのは「腕力強化」や「脚力強化」などの腕力や脚力を上昇させる技能だった。
これらの技能を身に付ければ非力なナイも今よりは強くなれるかもしれないが、他の技能の中で気になるのは「採取」だった。内容を確認する限りだと採取の際に良質な素材が手に入りやすいという。
「この採取を習得したらこれから手に入る野草や薬草が良質な素材になるのか……なら、これを覚えておいた方が良いよね」
狩猟の際にナイは薬になる薬草や食べられる野草も頻繁に採取しており、特に薬草などは薬の調合に多用するため、良質な薬草が欲しかった。余分に持ち帰った素材は売却できるため、この際にナイは「採取」を習得する事を決める。
「よし、一つ目は採取にして……他の二つはどうしようかな」
採取を習得する場合は覚えられる技能は残り2つとなり、より慎重に選ばなければならない。一応は腕力強化と脚力強化の2つを覚える事も出来るが、現時点のナイが欲しているのはこの2つ以外の技能だった。
「調合は……薬を作り出す時に便利そうだな。解体のほうも魔物を倒した時、解体するときに役立つだろうし」
現在のナイは狩猟の際に入手した素材を使って薬の調合を行っており、この調合の技能を覚えれば役立つ可能性は高い。最近は魔物の数も増えてきたため、交戦する機会も増えており、倒した魔物から素材を剥ぐ事も多く、解体の技能も役立つだろう。
だが、他に気になる技能は一つだけ存在し、悩みに悩んだ末にナイは「採取」と「調合」と最後にある技能を選択し、SPを消費して技能を習得した――
――翌日、今回は朝早くからナイはアルと共に山の中を歩き回り、狩猟を行いながらも山菜採りを行う。この時にナイは周囲を見渡しながら歩き回り、何かを発見するとすぐに報告を行う。
「あ、爺ちゃん!!あそこに薬草が生えてるよ!!」
「何!?また見つけたのか?おいおい、これでいくつめだ?」
ナイの言葉にアルは驚いて振り返ると、そこには茂みを掻き分けるナイの姿が存在し、彼は注意深く観察しないと分からない位置に存在した薬草を見つけ出す。
狩猟に赴く際は食べられる食材を確保するために二人は背中に籠を背負っているが、ナイの籠の方は既に大量の薬草や山菜、更には食べられるキノコでいっぱいだった。山に入り始めてからまだ1時間足らずでナイは大量の素材を入手していた。
「全く、この調子だと山中の薬草を見つけ出しそうだな……しかし、よくこんな場所に隠れていたのを見つけたな」
「えへへ……」
大量の素材を背負ったナイに対してアルは感心したように呟き、一方でナイの方も自分がここまでの素材を手に入れる事が出来るとは思わなかった。
(やっぱり、習得して良かったな……観察眼の技能)
ナイが悩みに悩んだ末に最後に覚えたのは「観察能力」を高める観察眼の技能を覚え、これによってナイは今までは気づく事が出来なかった素材の位置を見抜く事が出来るようになる。
普通の人間では注意深く観察しなければ分からない位置に存在する素材をナイは簡単に見抜けるようになり、お陰で今までは取りこぼしていた素材を採取できるようになった。しかも採取の技能のお陰で彼が手にした素材の殆どが良質な物ばかりであり、思いのほかに観察眼と採取の組み合わせたは良かった。
さらに観察眼の優れた所はなにも素材集めだけではなく、他の事にも大いに役立った。ナイはアルと歩いている途中、不意に視界の端に見えた物に気付き、咄嗟に足を止めてアルに注意を促す。
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