町と僕の差
二之幸太
無知
ある果てにある町では、日常的に差別が行われていた。
路地裏の不精髭が生え、やけに泥臭く酒臭い男を軽蔑。風俗店に売られたやせ細った女を心から見下す。社会からはみ出て追い出されたものはもう生きる価値がないと知らないふり。障害を持っている者は言うまでもなく嘲笑される。表皮の色が違っても嘲笑。血も涙もない奴らである。
だが町の人にとって、それは日常茶飯事であり、平和そのものだった。が、平和はそう長くは続かなかった。町の人々から信頼されている町長が亡くなったのである。町の人々は嘆き、悲しんだ。
「町長の代わりに息子の関を」と町長の願いで関は町長の座を引き継いだ。しかし、関は差別を酷く嫌っており、差別を見た時には、手に血が滲む程度に力を込める。そのくらいこの町には不向きだった。しかし関は差別を一刻も早く無くそうと、法を改善し差別反対のポスターを貼り徹底的に改善していった。しかし全くと言っていいほど効果はなく、差別は行われていた。
どうすればいいんだと日差しが入り暖かくお気に入りの部屋の窓の外を見ると、そこからは黒人の青年に石を投げつける少年たちが見えた。関は思わず家を飛び出し少年たちを止めに入った
「関が来た!にげろ!」と一人の少年がすこし生意気に言って見せ、少年たちは住宅街の奥に入っていった。関は青年に「大丈夫かい?」と聞くと
「すみません。大丈夫です。」
と礼儀正しく他人行儀に言った。関はすかさず自慢げに「僕がきっとこんなことさせないようにするよ」と歯をニッと出し、笑いかける。しかし青年は
「大丈夫です…」と言い、続けて「僕をちゃんと見てくれる人がいるので、大丈夫です」と断った。関はそうかと頷くもどこか納得できない表情をしていた。そして腹の奥底で関はこう思った。自分が助けてやると言っているのになんと礼知らずな奴なのかと。
しかし、関は諦めず幾たびも幾たびも法を変えてみたり呼び掛けを行った。町の人は関に強く反論しやめさせることを願ったが、関の父の事もあって強くは言えなかった。
そう変わらないまま1年が過ぎた。
そのころには、関は青年の言葉など忘れ、もはや差別を無くすことは意地となっていた。他に方法はないのかと頭を掻く。当たりには日の光に照らされたフケが舞っている。風呂に入らず不潔なのは一目瞭然だった。また目には隈が出来ていた。疲れ壁に寄りかかり、お気に入りの窓を見ると1年前と同じようなことが起こっていた。急いで青年を助けに行こうとするが足がふらつき眩暈を起こし窓に倒れこむ。仕事の疲れだった。眩暈が回復していく途中窓の外を見ていると、青年は町の人に助けられ笑顔で話し合っている。
関は驚いた様子で家を出て町の人に聞く。「どうして助けたんだ!?君は今まで人を差別していたではないか!」関が取り乱しそう言うと町の人は呆れ顔で答えた。「あなたの思う差別は私たちの中の区別ではないでしょうか?あなたは何も分かってない」町の人は関を見ながら言う
町の人の言葉に関はハッとなるが、
「そんなことはない!」と関が耳をふさぐよう強く言う
「あなたは遠くから見て差別と判断しただけ。詳しい状況も知らず自分が正義だと信じ私たちが悪だと断定する。あなたはこの町を差別しているんですよ。」
町の人はそういうと、青年を介抱しながら住宅街の奥に行った。
関は上を向き笑った。手の平からは血が2滴、目からは涙が3滴こぼれていた。
町と僕の差 二之幸太 @inzau
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