第282話 逝ってしまうとは何事じゃ

 宰相閣下の奥様が引きずる何か。

 まあ宰相閣下だよねあれ。


 そしてそれに気が付いた陛下が駆け付け、

「逝ってしまうとは何事じゃ!」

 いやまだ逝っていないでしょ?

「ロルフ・アーダム・フェルトの魂よ安らかなれ!」

「陛下、お言葉ですが宰相閣下の名前でしょうか?」


「うん?何じゃデルクよ、其方はこやつの名を知らなかったのか?」

「ええ。いつも宰相とか宰相閣下としか呼ばれていませんでしたから、存じませんでした。」


「そうか。因みにロルフの妻はシーヴという名じゃ。」

「まあ陛下。私の名を覚えておいででしたのね?」

「当り前だろう?かつての冒険者仲間だ。同じパーティーだった者の名ぐらいは覚えておるさ。」


 ・・・・気が付けば一陣の風と共に、宰相閣下は消えてしまいました・・・・あれ?


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


「えらい目に遭った。」

 宰相閣下は魔法で逃げた。そしてようやく独り言ちたのである。

【しかしデルクはとんでもない事をしたものじゃ。これは選定が根底から変わるのう。それにこれでは教会と全面対決は避けられぬな。】

 宰相はデルクが行う選定の仕方を自身で体験し、すぐにその本質を見抜いた。

【まさか司祭次第で選定が変わるとはな。司祭がレベル10とかありえぬし、これは盲点だった。それにアイテムじゃ。デルクはダンジョンで得たアイテムを参考に自身で新たに作った様じゃが、このアイテムも説明文が意味不明じゃし、あのデルタというたか、あの女子おなごの存在も意味不明じゃ。それを1人で、いや4人でか?見つけ出してしまうとは末恐ろしい存在じゃな。陛下とデルクの関係が良好なのも我が国にとっては良い事じゃな。くれぐれも教会の勢力にデルクが毒されぬよう気をつけねばな。】


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


「さてデルクよ、次はいよいよ余の番じゃな。」

 そう言って張り切っている国王陛下。

 そして王妃様がいつの間にか陛下の背後に。

「あなた、勝手に宰相を死んだ事にしてしまうとは何事ですか!」

「い、いやアンシェラ、ご、誤解じゃ!」

「何が誤解なのですか?まあいいです。メルヒルト、そろそろ行きましょうか。」

「シーヴから話も聞けたし、今回は3人で?」

「時に新たな境地へ至る事も大切なのですよメルヒルト。」

「そうですわね!では行きましょう!」


「おいどういう事じゃ!」

「あなた気をしっかり持って下さいましね?」

「ちょっと待て!これ2人とも余を引きずっていくとは何事じゃ!」

「あ、待って下さい。準備がまだ終わっていませんよ?」

 アイテム3人分用意していないんだけど。

「デルクや、私共は3人共精神異常には強いのですからアイテムは必要ありません。」


「しかしいいのですか?宰相閣下は精神異常耐性があったようですが、何やら途中で凄く落ち込んでいましたよ?」

「問題ないのですよデルク。」

 問題ないってどういう事なのかな?

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