第164話 油断していると、地上に生息している魔物がやってくるわけで

 僕達が相手をしていたのは、偶然なのか必然なのか、全てダンジョン産の魔物だったようで魔物の死体は見当たりません。

 つまりすべてドロップアイテムになって地面に落ちてしまっている、という事ですね。


 そして門が開き、冒険者達が一斉に外へ向かいます。

 いやちょっと多いよ!

 というかなんで戦うのを協力してくれなかったのだろう?

 そんな事を思っていると、マウト女史・・・・副ギルドマスターがいつの間にか隣に居ました。


「何が不満かなデルク君。」

「はいその、ドロップアイテムを回収するのって別にかまわないのですが、何で魔物と戦ってくれなかったのかな、と。」


 するとマウト女史は僕をジトッとした目つきで見てきます。


「それは本気で言っているのかな?あの魔物はどう見てもダンジョン下層の魔物だろう?しかもあの数だ。この近辺で活動している冒険者が仕留めるなんて無理だね。単独及び数匹なら数パーティーで何とかなるだろうが・・・・」


 僕は驚きました。

 今も精霊が相手をしてくれている魔物ですが、ダンジョン中層ぐらいのレベルだと思うんです。


「デルク、私達は短い期間で強くなりすぎたんだ。」

 セシルがそんな事を言っていますが、うーん、ダンジョンを脱出するのに必要なレベル上げだったんだけど、短い期間だったのかな?


「納得していないようだから指摘しておくが、君達の年齢ならレベル5がやっとなんだ。15歳までにレベル5を目指すように最初に言われたはずだ。」


 3年前にそんな事を言われた気もします。

 うん、確かに言っていた。


「しかしなデルク。普通はレベル5からが大変なんだ。5から6になるのに普通は数年かかる。そして6から7になるにも下手をすれば10年程かかる。そしてレベル8だが・・・・30代でレベル8なら一流だろう。9は・・・・普通の冒険者は一生かかってもそこまで到達できない。」


「え?でも僕はレベル9なんだけど。」


「いいかい、ダンジョン上層で50年魔物を毎日10匹仕留めてもレベルは恐らく5止まりだ。高レベルの冒険者がレベルを上げようと思えば、格上の魔物と戦うか、仕留める必要がある。明らかにレベルが低い魔物を仕留めても殆んど経験値は入らない。しかし、下層の魔物なら話は別だ。運良くレベル5の冒険者が70層辺りで魔物を仕留める事が出来れば?あっという間にレベルアップ間違いなしだ。」


 敢えて言わないけれど、魚エリアでこんなのでいいのかな?というやり方でレベル上げしちゃったけど・・・・それも含めてのレベリング。教えたらマネする人が続出しそう。

 この方法だと他の冒険者もあっという間にレベルが上がりそうだから注意が必要だね。


 僕がマウト女史の話を聞いていると、ドロップアイテムを回収している冒険者が血相を変えてこちらに走ってきます。

 あ、魔物が追いかけてきてますね。


「デルク!見た事のない魔物!」

 セシルが魔物の群れを見てそう指摘してくれます。

 いやあ、ドロップアイテムを回収してくれるのはいいのだけど、魔物を連れて戻っちゃ駄目なんじゃ?


 そしてその魔物、セシルの指摘がある通り見た事がない魔物です。

 商人になって鑑定してみよう。


「セシル、商人にジョブチェンジするので、少しの間僕を守ってくれるかい?」

「ん。わかった。」


 こういう時精霊に守ってもらえれば楽なんだろうけど、今の僕には精霊使いのジョブをそこまで使いこなしていないので、いきなりそういう事はしないでおこう・・・・上手くいかなければ身の危険が増大する上に、周囲に迷惑が掛かりますし。


 急ぎ鑑定をしましょうか。


【マンティコア】

 と出ました。

 これ以上は時間がありません。


「マンティコアって出た。」

「知らない。」


 僕も知りません。セシルも知らないようです、何だろうね?

 しかし何だか複数の魔物の特徴があるような?それに羽らしいのがあるけれど、空を飛べるの?


 逃げている冒険者達が僕達の横をすり抜けていきます。

 おや?マウト女史は逃げないのかな?


「君たちの戦いぶりを、とくと見させてもらおう。」

「いいんですか?守れませんよ?」

「気にするな。これでも冒険者だ。あれぐらいの魔物なら自分の身ぐらい守れる。」


「セシル来たよ!僕は魔法を使ってみる。」

 前衛2人は既に剣を抜いて迎撃の態勢が既にできています。流石は本職。

「うん、わかった。剣先に集中し、魔力を込めた一撃を放ってみる。」


 さっきセシルがやっていた攻撃方法だね。いいよねあれ。何だかカッコいいし。

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