第134話 移設

 どうやら全く違う建物のようで、ここには僕の知り合いはいませんでした。

 ですがここの今の持ち主はトゥーニスさんの事を知っているらしく、


「あああの人達ね、王都へ移動しちまったよ。何でも王様直々にお声がかかったらしくてね。」

「え?そうなんですか?困ったなあ。」


 僕はこの街にトゥーニスさんが居なくなっていた事に驚きつつ、王様にお声がかかったって一体何か凄い事とかあったのかな?


 トゥーニスさんって確か庶子だけど王様の息子だったよね。

 無いと思うけど今の王様に何かあって、トゥーニスさんが次の王様になるとか?

「どうせ王都って言ってもこの街とは隣だし、1日歩けば着くんじゃないかい?」


 ここの持ち主はそんな事を言ってくれるけど、じゃあ他のお弟子さんとかどうしたのかな?商売もしていただろうし、一応トゥーニスさんって貴族だよね?貴族がそんなホイホイと街を移動していいのでしょうか?


「そうですか、ありがとうございます。旅から帰ったので、お世話になったトゥーニスさんに挨拶をって思ったんですけれど、あの、他のお弟子さんとかはどうしたのかご存知でしょうか?」

「あん?あ、ああ、そう言えば店の丁稚やら店員って弟子だっけね。たぶん全員ついていったんじゃないかい?この街からは全部引き上げちまってるからなあ。」


 その後も話を聞きましたが、特に得られる情報もなく、僕はこの場を引き上げました。

 トゥーニスさんは無事らしいからまずは安心だけど、ヴィーベさんとリニさんはどうなったのかな?

 あ、それに今日はどうしよう?

 この3年近くの状況がわからないし、冒険者ギルドで話を聞こうか?それとも商人ギルド?


 ●注:この世界では一般的に【ギルド】とだけの表記の場合、冒険者ギルドを指します。●


 そうだなあ・・・・宿で寝泊まりするにも先立つものがないから、商人ギルドで素材を引き取ってもらったり相談をしてみようかな?

 それにトゥーニスさんとお弟子さん達の状況もわからないし、ギルドには明日行くから、今日は商人ギルドで換金と情報収集、後は宿かな。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


「ようこそ商人ギルドへ!」

 綺麗な受付のお姉さん・・・・綺麗と言うか、知的な感じで細眼鏡がとても似合うお姉さん。

 そんなお姉さんが受付から声をかけてくれます。


 どうやら今はさほど忙しくない感じです。

 僕はそのお姉さんの所に向かいます。


「ええと初めましてでいいのかしら?本日はどのようなご用件でしょうか?」

 多分このお姉さんとは初対面。

「えっと、お金を工面したいのですが、ここでは素材の買取はしていますか?」


 はて?といった表情のお姉さん。

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