第74話 レイナウトとロース

 たぶん朝になったと思われる頃。

 救助した2人、レイナウトとロースが目を覚ましました。


 たぶん朝、と言うのもダンジョンでは時間がわからないので、恐らく朝だろうと。

 まあ気分的なのもありますけど。


「デルクおはよう!」

 レイナウトが先に起きだしたようです。

「レイナウトおはよう!もう起きて大丈夫なの?」


「一晩寝れば問題ないさ。」


「セシルちゃん、おはよー!」


 セシルに元気な挨拶をするロース。ロースはさっき起きだしたみたい。

「ん、おはよ。」


 そう言えばロース達はセシルと一緒に学んだ事があるんだっけ。


「僕は女子とは殆ど関わらなかったからね、つまりロース以外はって事だけど。セシルの事は知っているけれど、あいさつ程度しかした事がなくってね。」


 ああ、成程ね。


「私はセシルちゃんと何度か勉強したよ?何せ私が得た職業の人って周りにいなくって、司祭様がよくセシルちゃんと一緒に色々教えてくれていたのよ?」


 はて、何故疑問符?

 そう思うと、僕も疑問符でした。


 4人が揃ったので、食事の用意をする事にします。

 そうは言ってもレイナウトとロースは汚れたまま寝かせてしまったので、風呂に入ってもらいます。

 一応浄化の魔法は使ってはいたのですが、気分的なものも含め少し風呂でリラックスしてもらいます。


 特にロースには断りを入れて、ロースが入浴中に、セシルにはロースの着ていた服を持ってきてもらい、浄化をします。

 流石に万が一脱衣所で裸のロースと鉢合わせ、となってしまえば色々問題となるのでセシルに頼みました。

 レイナウトは男なので脱いだ傍から僕が浄化をしました。

 そして2人には体を拭く布を用意しておきました。


 一応浄化があるので、別に風呂は入らなくても魔法を使えば綺麗になります。

 ぶっちゃけ風呂に入る必要は無いのですが、どういう訳か湯につかると魔力の回復が促進される効果があるらしく、2人にはしっかり入ってもらいました。

 後はリラックス効果。

 これは精神的なので、どこまで効果があるか分かりませんけど。

 多分ですけど、リラックスした状態の方が色々回復がしやすいのではないかな。


 料理に関して、食材はダンジョンで採取・ドロップしたお野菜や肉、魚を使います。


 幸い塩は豊富にあるので、味付けは塩を中心に。

 あとハーブがソコソコ採れたので、ハーブで味付けを。

 甘味は果実を使って。


 あ、忘れいてました。

 僕の収納かばん、時間経過が早くなるカバンがあって、この特性を利用し果物や野菜を細かく切って煮詰め、熟成させているんです。

 街で教えてもらった通りに作っていきます。

 お酢はなかなか面倒でした。臭いがきつかったので・・・・

 ただ、お酢がないと美味しいタレができないんです。

 それを思い出したので取り出すと・・・・


 いい感じです。

 お肉にかけると美味しそう。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


「何これデルク!凄くおいしいわ!セシルちゃん!貴女ラッキーね!こんな素敵な旦那さんをゲットできて!」


 セシルが盛大に吹き出します。

「だ・・・・旦那さん?」


 そこで何だか期待してるような眼差しを向けられてもねえ。

 つり橋効果だからね、セシル。

 僕がセシルを助けた事で、セシルは勘違いをしているんです。

 時間が経てば気が付くでしょう。

 助けられた恩を好意と勘違いしてしまっていると。

 それにまだ僕達は子供だから。


 ダンジョンを脱出したら、きっとセシルには素敵な彼氏ができるはず。

 うん、セシルはとても素直で素敵な女性だから。


「ロース、何を言っているんだ。まだ・・結婚していないんだから。」

 レイナウトはローズに突っ込みを入れてます。


「あ、そうだった。そうよねレイナウト。ところで私達は何時結婚するのかしら?」

 そう切り返されてもレイナウトは動じません。


「そう言うのはロース、君もデルク並みに料理ができるようになってから言うんだね。因みに僕は実家が食堂だったから、肉だろうが魚だろうがなんでもござれさ!」


「ああそうだった!私の家って酒蔵だったから、お酒を造るのって子供には教えてくれなくってさ!結局作った酒を運ぶ手伝いとか、帳簿の管理しかさせてくれなかったわよ!」


 10歳の子供に帳簿の管理をさせるってどうかと思うんだけど。

 ロースは賢いからきっとうまく出来たんだろうね。

 でも今は12歳だよね?僕と同じ年だから。


 それおりも何故、レイナウトとロースはダンジョンの大穴から落ちてしまったのでしょうか。

 どの階層から落下したのかわかりませんが、レイナウトはそれなりに魔法を使えたはず。

 フライや違う魔法、例えば身体強化の魔法やシールド魔法・・・・たぶん盾みたいなのを魔法で構築するんだけど、そう言うので落下の衝撃を抑えていたはず。

 そうでなかったら囲いにぶつかった衝撃で粉々になっちゃうはず。粉々にならなくても四肢が千切れ、内臓は破裂し、たぶんほぼ即死。

 まあ食事が終われば話を聞こうかな。そう言えば2人を発見した時、フライの効果が残っていたっけ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る