第52話 果物エリア
ボス部屋の次にある階層は、確か安全な階層。
但し下層が必ずしもそうとは限らないので、念の為慎重に進みます。
階段を下り眼下に広がったその風景で、ここがどの階層か概ね理解しました。
果物エリア。
恐らくは76層でしょう。
51層という可能性も捨てきれないですけれど、落下した時間と僕が魔法で何とか対応をした時間を考えると、51層という考えはまずありえない、と。
しかしながら、現実にどの階層か何となくでもわかると安心しますね。逆に言えば未だ70層以降の攻略がなされていない事から、だけど実際には71層には行っているみたいなので、恐らくは過去72層で撤退したと思われます。
僕の知る限りダンジョンは70層以降の情報はないんです。
誰も70層以降に進んでいないので、仕方ありません。
多分70層で精魂尽きて、そのまま脱出したと考えるべきでしょう。
正確には生きて70層より下に挑んで戻ってきた冒険者がいない、という事です。
恐らく過去にもっと下へ向かった冒険者はいるでしょう。
ただ、下手に下へ向かえば、強すぎる魔物に対抗できず、残念な結果となった猛者も居たはず。
現実を知り、僕達はここでどうやって生き延び、そして地上に戻るか考えないといけません。
僕達の実力では、正攻法で此処まで辿り着く事はできません。ですので直接ルートを遡って戻る、という事も不可能です。
大穴から上に登ればいいような気もしますが、そう簡単な問題ではありません。
僕はまだ行った事がなかったのですが、例えば17層、この階層は魚のエリアと聞いています。
魚が空を泳ぐとか訳の分からない階層ですが、大穴にもこの魚は泳いで?飛んでくるので、大穴を登ればこの魚の餌食になります。餌食と言うか、魚にぶつかってしまいます。
まだ17層ならあいた!で済みますが、これが67層であれば、残っている記録によれば魚が猛スピードで突っ込んできて、人にぶつかれば数メートル吹き飛び、場合によっては人の身体を突き抜けるような凶悪さがあるそうです。
実際70層以降の攻略がなされていないのは、このエリアを突破するのが非常に厳しいからではないかと考えられています。
そしてここが76層であれば、間近の階層である72層、こちらは例えば22層は蜂エリアなのです。
別の階層ですと、もしかしたらもっと違う魔物が出現するかもしれませんけれど、それでも恐らく飛来する魔獣か虫。
下層の虫ですと、蜂といってもとんでもない化け物でしょう。
針に刺されたら、即死するような危険もあり得ます。
ですのでこの階層で少し食料を確保し、次の階層が何かを念の為に確認、肉エリアであればほぼ間違いなく現在地がわかるので、後で向かいましょう。
「セシル、果物があるので収穫してカバンに入れておきましょう。」
「わかった。だがどうするのだ?あのような大木を登るのか?」
目の前には相当大きな木が、とんでもなく高くそびえたっているような感覚です。
「登ってもいいですが、ここは風魔法でカットしてみます。」
僕は魔法使いのジョブを選択し、風魔法を遥か頭上の実に向かって放ちます。
木からは離れているので、実と木の枝の接点ともいうべきヘタ?見えている果実のヘタと思われる部分を切っていきます。
そして落ちる果実。
え?大きい?
僕がカットし落下させたその実は、恐ろしい音と共に地面へ落下。
僕の頭ほどありそうな、大きな実は何でしょうか?
鑑定をすると、
ココヤシ:外皮は固く、木から落下した実の直撃で死ぬ事もある。
外側の皮は良質な繊維が得られ、ロープの材料になる。
内皮は容器に加工できる。
実の中には液体が存在し、ココナッツジュースとして飲用できる。
実もそのまま食べる事もでき、ココナッツミルク、ココナッツオイルの原料にもなる。
ずいぶん利用部位のある果実ですね。
ある程度確保しましょう。
そして鑑定結果をセシルに伝えると、
「色々便利な果物なのだな。しかし魔法で収穫となるとそうそう採れないようだが、どうするのだ?」
「まあ、次の階層でお肉を確保できればいいけれど、そうでなければ暫くは食糧をこの階層で賄わないといけないから、その都度収穫する感じでいいんじゃないかな?それより困ったのは、野菜が採れない事の方なんだ。」
「うん?野菜が採れないとどうなるのだ?」
「ええとね、このココヤシという果実ってどれほどの栄養があるかわからないけれど、栄養が偏ると様々な影響が出る・・・・そう僕は思っているんだ。」
「どういう事なのだデルク?思っているのであって、確実な話ではないんだな?」
「そうだね、人から話を色々聞いたり本を読んだりそれらを考えると、どうも偏った食生活を送ると、集中力がなくなったりイラついたり、あまりいい影響はなさそうなんだよ。」
こういった下層で集中力が切れたら、死活問題だから気を付けないと。
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