第43話 セシル・ヴァウテルス その2

 神聖騎士に選ばれると国へ報告をするようだ。

 それに教会?司祭様は別の教会へ報告をしているようだ。

 それがどういう事を意味するのか、私にはわからない。

 ただ言える事は、司祭様が報告をした翌日には、国から御大層な装備一式が届いたという事。


「セシルはまずその防具を装備したまま動くことができるようにならぬとな。」


 そうはいっても私は小さい。同年代の女の子と比べても小さい。

 なので力がない。


 それなのにこの装備。

 私の体重より重い。

 いくら頑張っても動けない、動かない。


「司祭様、無理。」

 困り果ててそう言うけれど司祭様は、


「だがな・・・・神聖騎士はこれを装備する決まりなのだ。暫くは体力作りだな。」


 私はひたすら体力増強に努めた。


 その甲斐あってか3か月後には、鎧を装備しても歩けるようになった。


 そしてそうなると、他の冒険者が私を獲得しようと教母様の所へやってくる。


 教母様は私の暮らしている修道院の責任者。

 司祭様とは旧知の仲らしく、私の事で頻繁に話をしている。

 ああ、家族とは修道院で一緒に暮らす人の事。

 既に父や母はこの世にいない・・・・はず。

 物心ついた頃にはもういなかった。

 教母様が母代わりだ。


 そして私は見た。教母様が何か重そうな袋を受け取っているのを。


「セシル、貴女をこちらのパーティーが受け入れて下さります。」

 ・・・・折角凄いと言われている職業を引いたのに、私に選択肢はないのでしょうか?

「はい・・・・」


「セシルちゃんだっけ?歓迎するぜ!俺達に任せときゃすぐに立派な神聖騎士様になれっからよ!」

 別に立派になりたいわけではないのだが。


「そういうわけですので、今後はこちらの方々とご一緒するように。」

「かしこまりました・・・・」


 こうして私は売られていきました。


【あの小汚い娘にこんな価値があるなんてね・・・・】

 私は聞こえない振りをしました。


 そして私はCランクのクランへ所属となりました。

 現在同じ日に選定を受けた人も数人います。


「よしお前達よく聞け!今回最大の目玉でる神聖騎士をやっともらい受けた。魔法とあの装備でもって前衛を強力にこなしてくれる職業だ。魔法は回復と防御らしい。」


 おお!と聞こえる。


 そんなに回復魔法は珍しい?


「回復魔法か!よく教会が手放したな!」


「ふっ・・・・そこは俺様の交渉力の賜物さ!何せ滅多にお目にかかれねえレアジョブをメンバーに加えれば、クランに箔が付くってなもんさ!」


 ・・・・私は何の為にここにやってきたのか・・・・


「それにだ、神聖騎士は成長すればそりゃあ強力なパーティーメンバーになるからな。」


 私は此処で1ヶ月、色々な知識を教えてもらいつつ、外で戦闘訓練も欠かさず行った。


 万が一には時は己の身一つが頼りになる・・・・

 回復魔法を覚え、たまに実戦形式で数人と共に草原へ繰り出し、居合わせた魔物と戦い、経験を積む。

 しかし最近周りの目が冷たい。

 何故かと言えば・・・・

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