第42話 セシル・ヴァウテルス その1

 Side セシル


 私の名前はセシル・ヴァウテルス。

 本日は年に1度行われる選定の日。しかも今年は5年に一度の【赤の日】とあって、本来は10歳にならないと選定を受ける事はできないが、5年に一度という特別な赤の日に限り、9歳の私も選定を受ける事ができる。

 赤の日は何故か良いジョブを引き当てる確率がぐんと上がるらしい。


 だしかし何事にも例外があるようだ。


 私塾の間では、神童と騒がれていた・・・・確かデルクといった・・・・彼が遊び人を引いた。何故か3回引いて、3回とも遊び人。

 彼は知らないだろうけど、以前私は街で迷子になり困っていた時に、彼に助けてもらった事がある。

 彼は泣きそうな私を励まして、そして私のわかる場所まで送ってくれた。


 遊び人は外れジョブらしいと聞いたが、本当に外れジョブなのか私は疑問に思う。

 ただ言える事は、遊び人になると命の危険に・・・・理由はわからないが命を狙われる事になるので、そういう意味では外れだ。


 私は運がいいのか、めったに出ない神聖騎士なる職業を得た。


 魔法・・・・回復魔法や補助魔法を使い、なおかつ専用装備で前衛もこなすとか。


 司祭様は喜んでくださり、周りの人も驚き、羨ましがった。


 普通のジョブでよかったのに。


 あ・・・・あの人はどうなるのだろう。だけど気が付けば、何処かへ去っていった様子。

 無事15歳を迎えられるといいのだけど。


 そして私は手続きやら祝辞・・・・お祝いの言葉を沢山の人にいただき、落ち着いたら司祭様に呼ばれた。

「おおセシル!おめでとう!私が司祭の時にこのような良いジョブを引いてくれありがたい・・・・いやうれしい。」


「いえ、これも何かの使命なのでしょう。」

 別に使命とかどうでもいいが、そう言っておけば司祭様は喜ぶらしい。


「神聖騎士なのだがな・・・・専用装備があるのだ。サイズはまあ、自動調節機能があるからセシルのような小柄でも装備できるから安心してくれ!」


 専用装備・・・・いったいどのような・・・・


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・



 私はこの装備が嫌いだ。


 神聖騎士になれば、必ず装備しないといけないらしいけれど、私には重たすぎる。

 大きさは体にぴったりになってくれるが、重さが変わるわけじゃない。

 重すぎてまともに歩けない。

 腕も満足に上がらない。

 ただ、このヘルメット、顔を隠せるのは有り難い。

 私は人と接するのは苦手なのだ。


 特に男の人は駄目。


「セシルよ、そなたは15になるまで修行をせねばならぬ。先輩冒険者に付き従い学ぶがよい。神聖騎士なら引手あまただろうて。」


 修行・・・・

 ジョブを極めスキルを学び、立派な冒険者にならねばならない。

 私のような貧乏な環境に生まれると、選択肢は殆どない。

 せめてどこかで働けたらいいのに。ただ、働き先は常に満員。

 結局冒険者にならざるを得ない。

 せめてダンジョンで稼いで、今の家族に楽をさせてあげたい。

 家族と言っても血の繋がりは無いのだが。

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