第32話

今日はあみちゃんの息子さんのホクト君も一緒にいつものファミレスで暇つぶし。ほっくんは長くあみちゃんといられる時間を本当に楽しんでいるみたい。学校の話とか、ゲームの話とか沢山してくれる。


「そういえば、ベムとよしえさんいつも通り窓の外にいるの?」


「あれ、ベムはいるけどよしえさんがいない。どうしたんだろ、逆に心配。ちょっとトイレ。」


数分後、あみちゃんが血相を変えて戻って来た。


「トイレ出たらいきなり出口によしえさんがいた!しかもあみちゃんって呼ばれたから、びっくりして逃げてきちゃった!」


どうしたよしえさん!血迷ったか!!


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よしえは落ち着いた表情でトイレ方向から歩いてきた。あみと康平の後ろの席に着席する。


「あみちゃん、って呼んでみたかったのよ。ごめんなさい、びっくりさせちゃって。最後に一言謝らせてもらいたくて…。」


「は?どういうこと??」


「私、今日までなの。明日から来られなくなるから。今まであみちゃんと康平君に嫌な思いをさせてしまって本当にごめんなさい。」


「どうしたのよしえさん、今まではずっといきり立ってたのに。あと何でこんなにさめちゃんに近づけるの!?」


「私にもわからない。精進したから…かな?康平君の力ってこんなに暖かいのね。」


「あたりまえじゃん!だから何でいきなり謝って来るんだっつーの!怪しいんだけど。」


「私、今日中にあみちゃんを連れて行かないと消されちゃうの。期限が決められていたから。」


「…え??」


「今までずっとあなた達といて、目を覚ますことができたというか…。羨ましいなって思って。あなた達、本当に良いアベックね。私もそうなりたかった…。」

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「あみちゃん、よしえさんどうしたの!?」


あみは急に後ろを振り返り言い放つ。


「よしえさんが寝返った!!」


…?ええええええええええっ!?


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「ベム見てるよ。そんなこと言っちゃってていいの?」


窓の外にはベムがよしえを睨みつけながら仁王立ちしている。


「ああ、もういいの。その覚悟があってあみちゃんと話しているから。じゃあ、私は帰ります。二人ともどうかお幸せに…。」


よしえが立ち去ろうとした時、あみの体から幽体が飛び出し、よしえを引き留めた。


「ちょっと待って!何で消されちゃうの?そこまでされなくても良くない!?」


「いいの、いいのよ。初めからそういう決まりだったし。あなた達に悪いことばかりしてきた罰、自業自得なの。私が消えても悲しむ人なんかいないし、私にはもうなにも残されていないから。」


何も残されていないって…これじゃトキだった頃の私と一緒じゃん!!そんなの悲しすぎる、絶対にダメ!!


「私が話つける。消さないでってお願いしてあげる。」


「…!!あみちゃん、いいのよ、本当に大丈夫だから…。」

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「さめちゃん、ちょっとの間私の体ぼーっとすることになると思うけど気にしないで。瞬きもするし、心臓も動いてるから。ほっくんのことよろしく!」


「え、あみちゃん?何言ってるのかわからないんだけど…?」


返答がない。でもあみちゃんが言ってた通りまばたきはしてるし、肩が動いてるってことは呼吸もしている。


「あみどっか行ったんでしょ。たまにあるから。空飛べるって言ってたし。」


ほっくんがあっけらかんと答えた…。


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「平和教の、あそこの聖地だよね?けっこうスピード出すから私の手、絶対離さないで。」


あみは無理矢理よしえの腕を掴み、瞬く間に消えるように飛んで行った。

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