第28話

その帰り道、あみちゃんの様子がまたおかしい。途中まで普通に歩いていたのに急に立ち止まりうなだれている。また始まったか。


「お前らに先はない…。もう終わり、もう終わり。」


「あみちゃん!戻ってきて!あみちゃん!」


手を握ろうとするが全力で振りほどかれ、その場から動こうとしない。もうちょっとであみちゃんの家の隣の神社だ!あそこは結界があるからどうにか神社まで連れて行こう。


引っ張ろうとすると大暴れするあみちゃんをどうにかいつもの境内の座れるスペースまで連れてくることが出来た。


「いい加減にこんなことするのやめろよ!」


手を握り真言を唱え続ける。いつもなら物凄く抵抗されるのに今日は無反応だ。


「無駄…もう終わり。」


「終わりなんかじゃない!早く出て行けよ!」


一心不乱に真言を唱え続ける。もう百回以上は唱えた気がする。いつもなら収まるのに何で今日は全然効かないんだよ!


「あみちゃん!あみちゃん!聞こえてる!早く出て来て!」


あみの耳元で叫び続ける。


「あみちゃん!早く出て来て!さっき二人で頑張るって言ったじゃん!俺一人じゃ無理だよ、お願いだよ、一人にしないでくれよ…。」


「放せ、無駄、もう終わり…。」


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何も見えない真っ暗な世界であみは目覚めた。まだ眠くてたまらない。


「ここどこなんだろ…。」


遠くの遠くの方からかすかに康平が自分を呼ぶ声がする。


「眠い…さめちゃんの声…?泣いてる…?」


「どうしよう、さめちゃんが泣いてる。ずっと呼んでる!行かなくちゃ!でも体が動かない、真っ暗だしどこへ行けばいいの!?さめちゃん、さめちゃん!!」


その時あみの隣を何者かが通り抜ける感覚がした。

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康平はあみの名前を泣きながら呼び続けている。


「あみちゃん、あみちゃん、あみちゃん…。」


突然あみは頭をバットで殴られたかのように体が前のめりになった。そのまま動かない。


「さめ…ちゃん…。」


あみがぼそっと呟いた。


「あみちゃん…戻って来られたんだね!もうダメかと思った。二人で頑張って行こうってさっき言ってたのに、一人にされちゃうって思った。一人でなんて無理だよ、一人にしないでくれよ。」


あみは号泣する康平の頭をもうろうとしながらも優しくなでた。


「本当にごめんね、ごめんね…。」


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「邪魔が入ったか。行くぞ。」


すたすたと立ち去るベム。よしえは康平とあみを見つめたまま動かない。


「何をしてるんだ。お前には時間が無いんだぞ。早く次の手を考えろ。」


「は、はい…申し訳ありません。」


「お前ら、あいつらに手を出したら許さんからな。」


そう吐き捨てられたのは篠田さんともう一人の女の子。


「失敗してやんのあのくそジジイ。ミホ、あいつらより絶対早く連れて行くぞ。」


「うん…でも…。」


「なにためらってんだよ!早くあの女を連れて行かないとババアに何されるかわからないんだようちら!」


「そうだよね…それはわかってるんだけど、悪そうな人たちじゃないし…。」


「ミホはお人よし過ぎるんだよ!あんたのことは私が絶対助ける。だからあんたも協力して!」


「うん…わかった。」

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