第18話

護摩炊きが終わり二人は境内を後にする。


「で、あみちゃんどうだった?やっつけてくれるって言ってた?」


「いや、それは厳しいって。でもさめちゃんに力をくれてたよ。持ってる剣でさめちゃんの頭をズビシッてやってた。そうしたらさめちゃんが金色に輝き始めてさ(笑)」


うおおおお、俺の知らないところでそんなことがあったなんて。不動明王の力か、何か強そうだ。でもここに来たからって解決するわけじゃなかった。これで終わる、解決すると期待していた気持ちが一気に崩壊する。


「あとね、さめちゃんに伝えろって。迷うな、どーんと構えてればいいって。」


迷うな。どーんと構えてればいい。そうなのかわかった!とは言い切れない。迷わないでどんと構えるってどうすればいいんだろう。それが出来ればもう大丈夫になるってこと?良くわからないけど、出来るようにならなきゃ。


「あとこれ。さっき境内から出る時貰ってきた。」


あみが手渡したのはお寺が無料で配っている小さなカード。そこにはひらがなで呪文のようなものが書いてある。


「不動明王ご真言?だって。不動明王の呪文だよきっと。これ護摩炊きの時にみんなで唱えてたやつでしょ。」


たどたどしく康平は真言を読み始めた。


「のうまくさんまんだあばあざらだん せんだあまあかろしゃあだ そわたやうんたらたあかんまん?」


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真言を唱え始めると康平は体から金色の光を発し始める。唱え終わると光は収まった。

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「うんたらたかんまんだって。何か変なの。」


「さめちゃん、凄いよ。さめちゃんが真言唱えてた時体が光ってた!」


「えええ!凄いじゃん。まあ、俺には見えないけど。でもそれって不動明王の力ってことだよね!」


「あと言われてたのはね、何だっけ。そうだ、さっき買った木彫りの根付。困ったときに握りしめれば力をくれるって言ってた。」


康平は根付をつまんでじっくり観察してみる。


「それめっちゃ光ってるんだよ。眩しいからあんま私に近づけないで。」


冗談交じりに根付をあみの目の前まで持っていくと、手で顔を覆いギャーギャー言いながら顔をそらした。


「何それ、近くに持って来られるだけで凄い熱いんだけど。お願いだから本当にやめて。よくそんなの触っていられるね。」


あまりひつこくすると本当に怒っちゃいそうだからいい加減にしておこう。この根付、いつでも持ち歩いて大事にしておかないと。真言も頑張って覚えよう。あいつらに対抗出来ることは何でもしなきゃ。

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