お化けポリス

@mayomoya

第1話

仕事を辞めてから繋ぎのつもりで始めたコンビニの夜勤アルバイトを始めてから1年が経とうとしている。30歳を過ぎると就職先の幅が一気に狭まると言われているし、早く行動しなければならないが、なんせ昔から自分に自信がない。


今日のペアは岩田さんだ。仕事が少し暇になると、一服しておいでと声を掛けてくれるいつも優しくて、気さくなおじさんだ。毎日岩田さんとペアならいいのにとつくづく思う。


早朝の商品入荷も終わり、朝の来客ラッシュが始まる。その波と共に朝番の店長、主婦コンビの小島さんと吉田さんが出勤して来た。


8時に引継ぎをして退勤。と言いたいところだけどいつものお決まりパターン。店長と小島さんが現れない。吉田さんだけは時間ピッタリにレジに到着。


「おはようございます。店長と小島さんまだですかねぇ。」


「おはよー。まぁ、いつも通り裏で話し込んでるっぽいね。私が出る時まだエプロンさえしてなかったもん。」


お決まりといえばお決まりだから慣れてはいるけど、本っ当早く来てくれないかな。岩田さんなんか最初から諦めているのか出入口周辺の掃除を始めている。


「鮫島さんって家近いの?」


吉田さんから話しかけてきた。そういえば引継ぎの挨拶ぐらいで、普通に話をする機会なんて今までなかったかな。


「はい、ここから10分ぐらいですよ。吉田さんってお子さん3人いらっしゃるって聞いたことあるんですけど、子育てしながら仕事なんて大変ですよね。」


「全然、なれちゃえば大丈夫だよ。鮫島さんって多分私と歳近そうだよね。」


「今年30歳になりました。早く就職しろよって感じですよね。」


「えー!私も30!同い年じゃん!」


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「何で銀色に光ってるんだろ。こんなオーラの人初めて見た。怪しい。」

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まさかの吉田さんとタメということが判明。吉田さんって接客もパーフェクトだし、お客さんに人気あるし、なんせこのデーンとした構え方を見て絶対年上だと思ってた。


だってこの前見たもん。タバコを持ってきたおじさんが年齢確認のボタンを意地でも自分で押さないから、ご自分で押していただけないと、お売りできません。お引き取りください。次のお客様どーぞーってでっかい声で言ってるところ。俺には絶対無理だ。


「さめちゃんって少し幼く見えるから、ちょっとぐらい年下かと思ってた。」


「年齢不詳ってよく言われます。。。」


「てゆか、タメなんだから敬語やめない?もしかして第一中?」


「!!そうです。第一中です。」


3年間同じ中学に通っていたのに、お互いの存在を知らなかった奇跡。まあ、俺いじめられてたし、暗かったし。吉田さんはカーストの上位って感じだしな。


明るい挨拶と共に店長と小島さんがやってきた。10分遅刻だぞ。朝食は職場で購入し、この時間に帰宅すると丁度姉の綾香の出勤時間と重なる。


「康平、今月の家賃と光熱費まだ貰ってないから、早く頂戴ね。」


俺たちは2DKのアパートに二人暮らし。一昨年父親が定年を向かえ、空き家になっている母方のおばあちゃん家を買い取り、夫婦で暮らしている。俺のことを心配して一緒に越さないかと声を掛けてくれたが、横浜から山口県の田舎の方に越すのは難だ。礼儀正しく、しっかり者の綾香と一緒に暮らすことで安心してくれたみたいだけど。


ねーちゃんは俺より4つ年上で、俺とはなんだかんだ仲は良い。小さい頃はいっつもねーちゃんの後ばっかり着けてたっけ。高校時代から10年ぐらい付き合ってた彼氏がいたけど、いつの間にか破局。それからは男の影がちらつくことなく、中学時代の友達とよくつるんでいる。大丈夫なのであろうか。


「今日かずちゃんが夜ご飯作ってくれるから、来たら開けて上げてね。んじゃ、行ってきます。」


また来るのか。かずちゃんはうちの父親が実の娘の様に可愛がっている、ねーちゃん中学時代からの親友だ。ねーちゃんと父親と3人で車旅行に行くほど仲が良く、うちの父親のことはパパと呼んでいる。家にも普通に上がってくるし、なんか変だけど家族みたいな関係だ。


昼間は寝て、かずちゃんのチャイムで目を覚まし、夜はバイト。俺の毎日はこんな感じ。早くこの負の連鎖から抜け出さなくちゃ。

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