墓守の仕事

バブみ道日丿宮組

お題:絶望的な墓 制限時間:15分

墓守の仕事

 墓守の仕事はそんなに大変じゃない。

 断崖絶壁にあるからこそ、見栄えるものもあるんじゃないかって思うけど……。

「ふぅ……」

 その場所につくまでに大半の人は疲れて3日ほど寝込んでしまう。険しい道を3時間も歩くとなればそうなってしまうのも仕方ない。

 車道が通っていれば、まだ楽はできたかもしれないがたくさんの木がそれを妨害する。通れてバイクぐらいだろうか? 何にしても乗り物にのってやってくる人は見たことがない。

 ちなみに記録によれば、最後の埋葬者は40年も前。親族が生きてるのかさえ怪しいところだろうか。お礼の手紙は毎年来るけれど、本人を見たことがないことからして、自動で書かれたものかもしれない。

 墓場からはきれいな空と海を見ることができる。絶景スポットとして世界遺産に入ってるとか入ってないとか聞いたことはあるが自分で調べたことはない。

 私がわかってることといえば、自殺の名所として有名ということだろうか。

 海に飛び込めば、まず浮き上がってこないだろう。

 まぁ……その前にここにたどり着く前に自殺を断念するのがいつものパターン。

「お疲れですか」

 今日も自殺未遂者が墓場の近くで寝転がってた。

 声をかけても反応はない。

 耳を近づければ、呼吸音が聞こえた。

 生きているのであれば、私の仕事にはならない。

 もっとも危険な状態であっても、助けを呼ぶまでに峠を越してしまうだろう。

 だからこそ、生きてても死んでてもあまり違いはない。

 自殺未遂者の近くに、食料と水が入ったペットボトルを置くと、一軒だけある小屋へと向かった。

「……うーん」

 今日はなにをして過ごそうか。

 墓荒らし対策をすべきか、あるいは動物が入ってこないように柵を強化するべきか。

 やることはたくさんあるのに、優先度はどれも高くない。

 奪われるものはないし、壊されたとしても、老朽化として扱われる、と政府の人がいってた。

 そんなわけで、墓守の仕事はこれっぽっちも忙しくないのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

墓守の仕事 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る