ボーイズタバコ

バブみ道日丿宮組

お題:煙草とボーイズ 制限時間:15分

ボーイズタバコ

 教室の片隅でぷわぷわと白い煙を作る集団がいた

「ねぇ、それ美味しいの?」

 そこに近づいたのは、一人の男子生徒。

「まずいよ」

「食感じゃないよ?」

「実際食べたこともあるから」

 集団が笑う。

「そうなの? 香辛料かけたらどう?」

「それはやったことがないな。でもまぁ……500円もする野菜にしては少なすぎだろう」

「選ばれた野菜たちかもしれないよ」

「にしたって、タバコはねぇな。こんな身体に悪いもんを好き好んで吸うやつは馬鹿なやつだけさ」

「君たちが馬鹿ってこと」

 集団が大きく笑う。

「そうだな。俺たちはこれぐらいしか存在アピールができないんだ。優等生なお前と違ってな」

「優等生じゃないと思うよ」

「運動神経はよくはないが、平均以上の点数を毎回試験でだしてる。俺らからすれば、それだけで優等生、いやヒーローなんだよ」

「そうなの? ヒーローなら悪いやつを倒さないといけないね」

「俺たちを罰してみるか? あんまいい成績つかねぇぞ」

 ポケット灰皿に集団が次々にタバコを入れてく。

「これでも平穏で生きてたいって思うんだ」

「なら、タバコもやめればいいのに」

「さっきも言ったろ。存在が消えちまうんだ。煙みたいにな」

「消えやしないよ。僕が知ってる」

「そっか。お前いいやつだな。こんな落ちぶれたやつに構ってくれるなんてよ」

 ひそひそとクラス内がざわつく。

「お前以外話そうってやつはいつもいない。友だちがいないってわけじゃないんだろ?」

 集団の一人が鋭い視線に目を向ける。

 そこでは女子生徒がノート片手に殺気めいたものを作り上げてた。

「ヒーローにヒロインか。物語が始まりそうじゃねーか」

 笑う集団。

「君たちと友だちになりたいんだ」

「お前もこりないね。俺らは日陰者なんだよ。眩しい太陽には勝てねぇ」

 一人が掃除入れに向かうと、ほうきとちりとりを出す。

「俺たちがこうして掃除しててもなにかの反省行為としてみられる。慈善行為だっていうのにな」

「それが友だちになれない理由?」

「そうともいえるし、そうじゃないともいえる」

 はぐらかす集団に男子生徒は首を傾げる。

「なら、そうじゃないほうで」

「なんだそれは?」

「握手。ここから始めるんだ。君たちが太陽になるのを」


 そうして、男子生徒は集団教育をはじめるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ボーイズタバコ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る