火事の人
バブみ道日丿宮組
お題:今年の火事 制限時間:15分
火事の人
「……うるさいわね」
防犯パトロールが始まったのはつい最近。
どこに行っても、警察がいたり、防犯カメラがあったり、レスラーがいたり、ドローンが飛んでたりと、街は何かに支配されるように動いてる。
それも当然のことで、毎週のように火事が発生してる。それも放火なのだといえば、防ごうとするのは当然のことだろう。防げるのであればね。
地図上で円形に広がってくことから、その付近に住んでる人は恐怖でしかない。いつ自分の家が燃やされるのか。狼に狙われたウサギのように震える毎日を過ごしてる。
防犯パトロールといっても室内で待機してくれてるということもなく、常時見張ってくれてることでもない。だからこそ、穴がある。
穴があるからこそ、火事が起きる。起こせる。
もっとも穴があるかどうかを知られてるのはもっと大きな穴であろう。誰が味方で、誰が敵なのか。この街の防犯を担当してるのは特に無能だ。
「……お嬢様。最新の巡回パターンです」
執事が部屋に入ってくると、数枚のA4用紙を手渡してくる。
「PDFのが良かったのだけど」
「そちらですと跡が残る可能性がありますので」
アナログにも穴はあるだろうと思ったが、長年この家を支えてる人間の言葉であればといいとどまった。
「ほんと雑な警備ね」
「そのようです」
今日の獲物はわりと簡単に燃えてくれそうだ。
「既に導火線は設置完了しています」
「……そう」
スイッチを押すだけで、家が燃える。
早い物競争もこれで終わりだろう。
「全くお父様も面倒な言いつけを作ったものね」
「そのようですね」
家訓として存在してるのは、街を恐怖に落とすこと。
ただ、殺人は除く。
火事を起こしても、誰も死んでる人間はいない。
誰よりも早く執事が家事の前に救い出してる。会話であったり、催し物であったりと人を動かしてる。
もっとも、模倣犯が生まれてしまった時点で家訓として対処するのはかなり怪しくなってきた。
「捕まえられそう?」
「現場にいる人間に絞り込めれば、可能です」
つまり、いなければわからない。
相手がどの家を燃やすか、こちらがどちらの家を燃やすのか、お互いにわかってない。
それが噛み合えば、捕まえることもできるが。
「はやいものじゅんね」
どちらがはやく話題になるか。
私たち放火犯にとっても、それだけの違いしかないのかもしれない。
火事の人 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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