おばのいいつけ

バブみ道日丿宮組

お題:不本意なドア 制限時間:15分

おばのいいつけ

 風が強い日。

 それはクジラが空を飛ぶ日。

 そんなふうにおばに言われて育ってきた。

 だからといえるのかわからないが、風が強い日は上を向いて歩く日が多い。

「あっ、ごめんなさい」

 接触事故はかなり多かった。

 子どもばかりでなく、スーツ姿の人までぶつかってた。

「ごめんですむなら警察はいらねーんだよ」

 こうして怒鳴られるのも日々のこと。


 ーー数分後


「なかなか良かったぜ」

 ベッドで倒れてる私に男は言った。

「使い慣れてるっていうか、名器にも近かったな。また頼むぜ」

 男は慣れた手付きで札束を投げて、服をきて出ていった。

 残された私は、汚れた身体を軽くティッシュで拭き取ると、シャワーに向かった。

 シャワーに行く途中でかなりの量が漏れたが、掃除するのは私じゃないと気にしなかった。

 シャワーを浴びて、かばんから新品の下着を取り出して、薬を飲んだ。こういうときのための常備薬だ。

「……まずい」

 この薬にはもう何十回とお世話になってるが、味になれない。そもそも薬が美味しいってことはないのだから当然なのかもしれない。

 制服を手に取ると、匂いを嗅いだ。

 男の匂いがないか心配だったがそんなことはなかった。

 時計で時間を確認して、急いで外に出た。

「また会ったな」

 すると、外には見慣れた顔があった。

 何度も私を汚した相手だ。ことあることに私が乱れた写真を送ってくる犯罪者だ。

「おっとーー」

 扉をしめて、時間をかけようと思ったが、

「そいつはナンセンスだ」

 扉は閉まる前に男の足が挟まった。

 そこからはもう記憶が残ってない。

 薬という薬を飲まされ、注射され、頭をおかしくさせられた。

 意識が戻ったのは、都内の病院で両親が心配そうにこちらを見つめてた。

 それ以来、親戚の車で移動をするようになった。


 もっとも、車で移動してない場所では警備なんてものはないから当然そういうことになった。

 自分の運命を呪うべきか、おばの言葉を罰するべきか、ピンク色の部屋で私は静かに声を漏らした。

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おばのいいつけ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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