甥っ子
バブみ道日丿宮組
お題:部屋とYシャツと虫 制限時間:15分
甥っ子
家に甥っ子たちがやってきた。
あぁでもないこうでないといろいろ歩き回る。
僕の部屋にはぬいぐるみが多いので必然的に集まってくる。これが欲しいやら、これ怖いやらといろいろな感想を言い放つ彼らの存在エネルギーはかなり大きい。
自分にもこんな時期があったのかと思うとちょっと怖い。
そんな甥っ子たちを秘蔵の場所に連れてくことにした。
いわゆるカブトムシが集まる木がある場所だ。親も同伴してみんなで仲良くピクニックのような感じになった。
甥っ子たちは普段見慣れない自然に大はしゃぎ。
大人たちはといえば、あついあついと文句をつける。
僕はYシャツが肌にぴっしりとくっつくほど汗を流してた。これだけの汗をかくのはだいぶ久しぶりだ。
大学は廊下も教室もエアコンががんがん効いてて暑いと感じることはない。移動はバス。通学路は屋内。いずれもエアコンがついてる。
汗という汗をかかなくなったのが昨今の状態だ。外で遊ぶというのは幼稚園や小学校ぐらいであとは屋内というか、空調管理された校庭で過ごすことになる。まぁ運動すればそれなりに汗はかくんだけど。大学ともなれば、選択しない限り運動なんてしない。
そういうこともあって、不健康そうな若者というのは少なくない。快適さを得るために人間が捨て去ってしまったのだろう。
なんにしてもいいものだ。
甥っ子たちの声を聞くだけで元気がでてくる。
最近大学に行くのも憂鬱になってた僕に活力を与えてくれる。
僕にも恋人がいれば、子供はできるかもしれないが甲斐性がない僕に誰がついてくれるのだろうか? 魅力は皆無だ。あるとして経済力が高いことか。
僕の祖先が宝くじを何度も当てたらしく、備蓄がかなりある。それは子孫たちが無駄遣いをあまりしなかったことによって残ってるということもある。
高級マンションに住むわけでもなく、ただ普通に生きる。
子供の頃に死んだ両親はそんな感じであった。
僕にとっては、甥っ子たちの祖母たちが親みたいなものだ。ここまでよく育ててくれた。それでも財産を譲るという気はない。わがままなのだろうか?
でも、死んだら、甥っ子たちに財産はいく。そのことを知ってるのはごく一部だ。これが知られたら闇討ちに合うこともあるかもしれないな。
「おじちゃん、はやくー」
「急いだたら虫逃げちゃうよー」
うん、元気だ。元気が一番だ。
今日も幸せに生きれたらいいな。
そうして僕はその日生命を落とした。
甥っ子 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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