んなもんねぇよ!タイトルなんか!

門前払 勝無

第1話

「んなもんねぇよ!タイトルなんか!」


 ナインを狙うとエイトが落ちてフラダンサーが五人で隊列を組んで踊っている。ロロロロ…とトラックに囲まれてクラクションを鳴らされて頭に貝を被らされている。赤信号が点滅していて僕ははっきょいのこったする。嫌々嫌、僕は無理はしないムリクリせがまないし汗なのか、これは水だ、水が頭から噴き出してくる。山から雲が降りてきてさっきのトラックを消してくれる。パイナップルをかじったと思ったら観葉植物だったー。


 どの位だろう…上を向いてずっと口を開けていたらしく口の中がカラッカラになっていた。


 ミッシェルがくれた錠剤は風邪が直ぐに治った。

 紫色の夜は青にグラデーションしていき、部屋の中には時計の時を刻む音しかしない。昨日、遠くへ出掛けたのに振り返ると一瞬だ。十年前を振り返ると一瞬だ、と言うことは二十年後も一瞬だ。

 振り返るから一瞬なのであって、振り返らなきゃ一瞬ではない。当たりは無いが間違えでも無い。ただ坂道を転がっていれば良いのである。転がると言うことは上に居ると言うことであって僕は上に行った覚えは無い。だから、転がれないと言うことだ。

 僕の人生で一番良く使う言葉は「かと思った」である。もしかしたら上手く行くかと思った。全身タイツを着て悪を退治すると決めて、そうするかと思ってたけど全身タイツを着たヒーローなんて居なくて居るのはギャーギャー騒ぐゴミ虫達だった。


 仕事をしていると一日に一回は俺は何をやってるんだと思う。俺はこんなんじゃ終わらない。大物になるんだ。そんな事を思いながらレジを打つー。


 悪を退治したいと戦っていだけど、よく見ると敵は5人組でカラフルな全身タイツを着たヒーローだった。あ!俺が悪だったのかと気を緩めたら、必殺技でやられた。

 地震が来ると言われたからそれを言っていたけど来なくて、皆に嘘つきと言われた。地震が来ると言われたからそれを言っていたら、ホントに来て皆にアイツはヤバい奴と言われた。

 ホントの事を言っていたら周りから人が居なくなった。ウソばかり言っていたら周りに人が集まってきた。


 本当の事を言うと逮捕されて殺される。

 統計データに則って生きるのが現代の人間的な生き方であって、本能を呼び覚ますのは得策では無い。酒やクスリを体内に入れると本能が出てしまうから禁止しないといけない。


 風は大きな扇風機で作ってる。土は皆の鼻クソで、水は死んでいった人の涙。火は奴隷が必死に興している。金は銀行が刷っているのである。これが五行説なのだと……この中で自分達は生かされている。死ぬタイミングは自分で決めていい。なるべくドラマチックな方が良い。


 死なない程度にハイになるのも良いが他人にやらせてはいけない。


 時々、ドキドキしながら恋をする。

 擦れ違った可愛い子に“振り向け!振り向け!”と念を送るがチラ見で終わる。そのチラ見を僕は二度見するのである。つまり、未練たらしいのであり、女々しいと言うことである。女々しいとは男に対しての言葉であって女には使わない言葉で正に僕にふさわしい言葉だと思う。


 脳裏に浮かぶ幸せと現実で妥協して感じる幸せとが交差していて、脳裏に浮かぶ幸せを目指して途中で間違えに気付いて引き返せなくてあたふたしながら時は流れてしまう。


 六畳の王国で僕は寝転がって天井の木目の中に入りたくなっている。


 それが現実である。

 ウィスキーの瓶に映る世界は歪んでいて僕はその中で生きている。歪な手先でふたを開けてクリスタルのグラスに飴色の薬品を注ぐ、喉から胸、躰の中を熱くする。煙草に似たものとウイスキーとチョコレート、たまにラム酒でも良い、今宵も雲の隙間から顔を出す月と夜を潜るのである。


 高速道路には百鬼夜行、河原には三途川を渡る行列、狸と狐がもぎりのバイトをしている。

 軍服を着て演説をしているナルシストの言葉は艶やかで、酒瓶を枕にしているオッサンは楽しそうだ。

 何も出来ない奴ほど常識を語るー。


 否定するなよ。僕は君と関わりたくないのだから、僕が気になるのは東口の風俗店の料金とコインパーキングの野良猫の親子と門の質屋のロレックスと薬局屋の女の子と明日の天気位だよ。

 明日になるとそれもまた変わってるけどねー。


おわり

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