人混みの中で

バブみ道日丿宮組

お題:名付けるならばそれは雑踏 制限時間:15分

人混みの中で

 病気というのはシーズンオフがない。

 だからこそ、夏でも冬でもマスクを付けるのが丁度いいことだと思ってたが、

「イケメンなんだから素顔晒してよ」

 彼女に強奪され、素顔をウィルスの蔓延る外の世界へと晒してしまった。

「彼氏がイケメンだろうがブサメンだろうが、付き合ってるんなら変わんないだろう」

 アルコールジェルで唇を濡らしながらぼやく。

「イケメンだったらそれだけでいいじゃん。ブサメンだったら付き合わない」

 なんと現金なやつだ。

「俺がブサメンだったら付き合ってなかったか?」

「ううん。ブサメンでも付き合ってたと思う。私にはぴったりの相手だよ!」

 なら、どうして比較なんてしたのだろうか。

「俺の親友なんてあんな太ってモテナそうなのに可愛い彼女連れてるだろ」

「そうね。お金じゃない?」

 なんてやつだ。

「普通の家だし、バイトも普通の時間だ。それに特殊な趣味だってない」

 AVの趣味は言わないでおこう……コスプレロリ巨乳が食事というのがバレたら学校に居づらいと思うし。

「ふーん、じゃぁいいじゃない」

「だからこそ、俺はマスクをつけたいんだ」

 新しいマスクをカバンから取って装着する。

「まだ持ってたんだ」

「必需品だからな。お前もつけるか?」

「私は蒸れるからいいよ。ないほうが空気が綺麗だし」

 多人数で混み合ってる中の空気が綺麗かどうかは怪しいところだ。これが山とか川なら違うことも会ったんだろうとは思うけれど、ここは街中だ。車の排気ガスやら、人の二酸化炭素でどちらかといえば、汚いと言えるだろう。

「マスクしなくたって大丈夫だよ」

「ゴホゴホしてる人がいたら、なんかの病気になるよ」

「その時は看病してよね」

 なんつぅ精神だ。

 そうならないための予防だというのに……。

「まぁ私がひくほどの病気なら世界に蔓延してると思うよ。知ってる?」

 一呼吸。

「私大学に入るまで一度も休んだことがないんだ」

「それはすごいな」

「さっきいってた。ゴホゴホってのは小学校とかであったよ。でもかからなかったよ」

 持つ免疫力の違いだろうか。羨ましい限りだ。

「俺はすぐ風邪ひくからなぁ」

「こないだもひいてたね。マスク意味ないんじゃないの?」

 そんなことはない……そんなことはないと信じたい。

「今度新しいタイプのマスクでるみたいでし、買ってみれば?」

 彼女からもたらされた情報や、世間話をしながら、俺たちはデートを楽しんだ。

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人混みの中で バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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